一年たった今、私にとって苦い思い出として頭をよぎるバレンタインデー。
元彼は、配信アプリで知り合った同い年の人。当時は彼が歌う歌声に惹かれ、よく配信に通っていた。そのうち、個人的にSNSでやりとりするようになり、「付き合っちゃう?」くらいのノリで付き合うことになった。
話してて楽しいし、何でも話せる彼に対して初め私に恋愛感情はなく、お試し程度でいつでも別れてしまえばいいと思っていた。
出会い方がアプリなだけに、いきなり遠距離恋愛が始まった。
遠距離恋愛でとにかく貢いだ。こんなはずじゃなかったのに
付き合った後、釣った魚に餌をやらないタイプの彼の気を引こうと、甘えることが苦手な長女は見栄を張ってとにかく貢いだ。
クリスマスなどのイベントに限らず、仕事を頑張って疲れきった様子の彼にスタバのドリンクチケットをLINEギフトでしょっちゅう送ったり、配信アプリの投げ銭機能に数千円を突っ込んでランキング1位を狙ったりした。しかし、彼からのお返しは未だにない。
付き合って5ヶ月目、少し深い話ができるようになって、関係が落ち着いてきたと感じていた頃。
バレンタインデーの季節になった。
私は、配信アプリで仲良くなった共通の女友達と、どんなものをプレゼントしたらいいか電話で話していた。
彼女から、彼の好きなキャラクターのぬいぐるみに手作りの洋服を作って着せてプレゼントしてみるのはどうか、と提案してもらい、いろいろと調べながら作った。私は、これなら喜んでくれるだろうとかなり張り切っていた。
コロナ禍というのと宅急便で届けるということで、チョコレートは市販のものを選んだ。中心にピンクのハート型が配置されたチョコレートセットを選んだ。
宅配日数を勘違いしていたことや土日を挟んでしまったこともあり、チョコレートは2月15日に届いてしまった。
彼はもらったことを喜んでいる様子だったので、ほっとした。
「ホワイトデーは俺が頑張らんとなぁ、楽しみにしててや」
と、電話の向こうの料理男子は得意げに言っていたのを鮮明に思い出せてしまう。
ホワイトデーを待っていたのに。見返りを求めた自分が情けない
1ヶ月後、言われたとおりに楽しみに待っていたわけだが、宅急便屋さんが届けてくれるのは自分で頼んだ化粧品や実家からの仕送りばかりだった。
彼は3月14日、他の女性配信者のライブ配信で高額の投げ銭をしていたのを、Twitterのタイムラインに流れてくるおすすめのツイートから知った。
数日待った。3月末まで待った。彼の口から一切、ホワイトデーの話は出てこない。
自分から「ホワイトデーのお返しは?」と可愛く聞ける自信がなかった。聞いていいことかさえ分らなかった。
バレンタインデーにチョコをあげたらお返しがもらえる、という自分の偏見が作った方程式が崩れ落ちた。そんな保証はなかったのだ。
私が元彼の“異常さ”に気付いたのは、それから3ヶ月経って別れを告げられた数日後のことだった。
去年の苦い思い出が頭をよぎるけど、新しい彼にチョコを
バレンタインのチョコって何であげるんだろう。
お返しが欲しくてあげるものなのだろうか。
見返りを求めすぎた自分が情けなくなった。
私は新しくできた彼氏にチョコレートを用意した。
喜んでくれるといいな。素直にそう思う自分がいる一方で、去年のことが頭をよぎる。
今年も自己満的なイベントになってしまうんじゃないか。
彼にホワイトデーのお返しのことを気遣わせてしまうのではないか……。
背伸びしていること、気を遣っていること、今付き合っている彼氏はそういうことを大体察してしまう。
でもきっと、もらったこと自体は喜んでくれるはず。
準備が一通り終わってから、そんなことを悶々と考える。