私に感情を取り戻させてくれた人。きっと、あれは初恋だった

私は自分の弱さに絶望していた。
なんでこんなに試練ばかりが起きる人生なんだろう?
前世は大罪人とかだったのかな。
夢を叶えるため、大学に進学した、その年の5月、私は学校にいけなくなった。
今までの積もり積もった感情が弾けて消え去ったように心は死んでいく日々。毎日なんて情けないんだ、消えてしまいたいと切に願っていた。
そんな私を見兼ねて、アルバイトでもして社会経験してみたら?と母が言った。
迷惑かけてるし、少しでも家の支えになればとアルバイトを探し始めた。
たまたま家の近くに求人募集を出しているところがあったので応募したら、ありがたいことに即採用してもらえた。
バイトを始めて2週間が経った。
大抵の人とは話したことがあるのに、1人だけ会ったことのない人がいた。どんな人だろう?怖い人だったらどうしよう……。
先輩たちは口を揃えて、良い奴だけどよく分からない人と言っていた。謎は深まるばかり……。
その時は突然訪れた。
一目見て、私きっとこの人のこと好きになると思った。
それはもう恋だった。
バイトに行くのがより楽しみになった。前よりも世界がキラキラして毎日が楽しかった。先輩と話せた日はそれはもう舞い上がって鼻歌を歌いながら帰った。ご飯に行けた日は嬉しくて夜は眠れなかった。
でも私の人生はやっぱり上手くいかないように出来ている。
「俺、もうここ辞めようと思ってる。どう思う?」
自分がどんな顔をしたか思い出せない。
声を振り絞って、「夢のためなら行くのがいいに決まってます。おめでとうございます!」
「そっか。ありがとう。頑張るわ」
ちゃんと笑えていただろうか、声はいつも通り出てただろうか?
月日は驚く程早く過ぎ去り、送別会の日になった。
どんな顔をしていいか分からなくて話せなかった。
二次会に連れていかれてもやっぱり話せない。
終電がもうすぐ出てしまう。先輩にまだ何も伝えてない。
私は終電を見送った。
友人が気を利かせて先輩に終電を逃したことを伝えたのか、すぐに今どこにいる?と連絡がきた。
駅の改札前にいると、俯きながらスマホに文字を打ち込んだ。
少ししたら、ねぇお姉さん可愛いね、遊ばない?って、茶化したように先輩が迎えに来てくれた。
私ってずるい女だと思った。
ほろよいの2人。
深夜の静まり返ったベンチで色んなことをたくさん話した。
好きだな、離れたくないと心から願った。
帰る時間だと何度も震えるケータイ。
もうほんとに会えなくなるんだと恋しかった。でも仕方ないから二人で歩き始める。
あの時と同じように優しい声で問いかけてきた。
「俺、東京にいこうかと思ってる。どう思う?寂しいと思ってくれる?」
「夢追いかけてる姿は素敵です。だから、頑張ってください。寂しくない!」
私は精一杯の嘘をついた。
「なんだ、寂しがってくれないんだ。可愛くないなぁ」と笑いながら話す先輩。
好きで好きで胸が張り裂けそうだった。
私は泣きそうで堪らなかった。
でも、笑顔が可愛いと褒めてくれる先輩に泣いている姿を見せたくなかった。
突然止まった先輩は「ごめん」と言って私を抱き締めた。
私の口から、好き、の2文字が溢れた。
少し驚いた顔してから大きな手が私の顔を包み込み、口づけをした。
幸せだった。
そして、そのまま私たちは会うことはなかった。
今、彼がどんなことをしてどこで生きているのか、私は知らない。
彼に伝えたいことが山ほどある。
私に感情を取り戻させてくれてありがとう。
たくさんの幸せをありがとう。
全身全霊で恋をして幸せでした。
私は夢を叶えられなかったけど、幸せに過ごしてます。
あなたはどうか夢を叶えてください。
健康で、幸せにこれからも生きてください。
大好きでした。
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