私のバレンタインの思い出は学生時代のこと。
中学3年生のバレンタイン。約3年間片想いした早見くんに、今年こそはチョコをあげるぞと意気込んでいた。
寡黙な彼に惹かれて3年。中学生活最後のバレンタインを迎えた
彼は隣のクラス。野球部のキャプテンで、学級委員長。少女漫画に出てくるよくいるタイプかと思いきや、口下手で他の男の子たちが騒いでるのを微笑んで見ているような子だった。だけどいつでもクラスの中心にいる人気者。
しかし、そんな彼は女の子と話すのが苦手で、自分から女の子に話しかけることは滅多になかった。
私は1年生の春当時、同じクラスだった彼のそんな寡黙なところに惹かれた。それから3年、クラスが離れてからもずっと好きで、彼に会いに用もないのに隣のクラスに遊びにいったり、偶然を装うために野球部が終わるのを待ち伏せしたり。アピール作戦が功を奏し、彼とは毎日メールする仲になった。
そのまま告白も出来ないまま時が過ぎ、中学生活最後のバレンタイン。
1ヶ月前からレシピを考え、告白のセリフを考え、おまけにダイエットまでしたのだ。怠け者でテスト勉強も前日にならないと始めなかった私がここまで頑張れるなんて、恋する女の子って本当にすごい。
毎日メールして他の子より仲が良いと思っていたのに、彼の返事は
事前に「持ち物検査が行われるかもしれない」と考えていた私は、朝一で音楽室へ向かった。当時吹奏楽部の副部長だったため、その権限を使い、音楽室の楽器ケースの中へチョコを隠しに行った。
そして無事一日乗り切り、部活後彼に告白した。
「好きです、付き合ってください」
あんなにセリフを考えていたのに、いざ目の前にすると緊張し全て飛んでしまった。
しかし、彼の返事はNoだった。毎日メールもしてたし、他の女の子より仲が良いと思っていたのに、彼には他に好きな人がいたらしい。
チョコは渡さず、帰り道に自分で泣きながら食べた。涙の味とチョコの味が混ざり、甘酸っぱいというよりは甘じょっぱかった。
それから日課だった彼とのメールは終わり、学校でも話さないまま私たちは中学校を卒業した。
それからというものあれほどの熱量で誰かにチョコを渡したいと思うことがなく、自分とお父さんのためだけにチョコを作って過ごしてきた。
あのバレンタインから3年後、突然彼から教室に呼び出された
しかし、あのバレンタインから3年後、高校最後の年にとっても甘いバレンタインを過ごすことになった。
実は当時好きだった早見くんはまさかの私と同じ高校に進学。だけどなんだか気まずくて、お互い全く話さないまま高校3年生になった。
そしてバレンタイン当日、廊下ですれ違った彼にいきなり声をかけられた。
「放課後時間ある?教室で待ってて」
そして彼は言い残したまま私の返事を聞かず、そのまま教室へ入っていった。
放課後、教室で待ってると彼が一人で入ってきて突然逆チョコを渡され、告白された。
「あれからずっと気になってて、今回は俺から渡そうと思った」と。
私はとても驚いたが告白を受け入れ、晴れてカップルになった。
3年越しに叶った恋だった。
彼は卒業後は地元の福島に就職、私は東京に進学し遠距離になってしまった。それから1年ほどで別れてしまったが、本当に素敵な時間を過ごせて幸せだった。
今となっては私には無縁になってしまったイベント。だけどバレンタインの時期になると、青春真っ只中の学生時代に王道を経験させてくれた早見くんのことを思い出す。