昔のバイト先の店長は、心理カウンセラーのようだった

きっとその気になれば会えるのだろう、連絡も取れるのであろう。でも、そうコンタクトを簡単に取れない相手がいるのは、わたしだけではないのではないか。
今会えたならと真っ先に考えてしまう人は、昔のバイトでお世話になった店長。

ちょっと年配な印象。
わたしと同い年のお子さんがいると聞いた。
かなり頭のいい人なんだろう。
仕事もよくできた。
近くにわたしと同じ病気を持つ方がいらっしゃったらしい。
かなり気にかけてもらい、特別可愛がってもらった自負がある。
店長は今何をしているんだろうと、時々考える。店長もたまにはわたしのことを気にしてくれているのかな。

この店長にはバイト時代、よく悩みを聞いてもらった。
この店長のすごかったところは、「聞いてくださいよ」と話しかけてもきっと聞いてくれないのに、「なんかあった?」と唐突に話しかけてきてくれるところだった。
心理カウンセラーやメンタリストみたいに。
なんかあった?と聞かれて初めて自分を省みても、「なんか」がわからなかったことすらあった。でも店長と話していたら、そういえばこれがつっかえていたのかなと思い当たることが見えてきた。

たくさん話して親子のようだと言われたけど、連絡先も知らない

話を聞いてくれるのも上手だったけど、たぶん店長の専門外のことについてもとてもうまく話してくれたのも、またすごいところ。
自分の趣味や学校の話。たぶん店長よりわたしの方がその分野強いよ、と自信があることでも、店長の方が上手(うわて)だった。
世の中にこんな人がいるのかと、何度本気で驚いたか。
店長のIQを、一度でいいから聞いてみたかった。

ちょっとキツイ言葉でものを言われることもあった。
わかりやすい図を書いて説明してくれることもあった。
その店長と知り合った頃、わたしはそのバイト先でかなり上の位にいて、かつ自分の仕事の範囲もマスターしていたので、仕事について相談したことや指導を受けたことはほとんどなかったはずだ。
それか、そんなのも記憶に残らないくらいに自分の話をしたのかもしれない。

今までのバイト先や職場で、目上の人に対してこんなにわたし個人を開けっぴろげにしたことはなかったなと思う。この先もないんじゃないかな、とも。
バイト仲間のみんなにも親子みたいだとよく言われた。
けど当然親子でないので、店長が異動してわたしが辞めて、会うことなんてパタリとなくなる。
わたしはスマホの中だけミニマリストなので、連絡先も知らない。

とにかくまた話してみたい。今度こそIQを聞いてみようか

会わず、話さずで何年経っただろう。
店長に会ったとしたら何を話したいのか。
今の自分を見てほしい。当時よりも精進はしたつもりだし、身の回りの環境も変わった。今どんなことをして何を考えているのか伝えたい。
そんなこと抜きにしても、あんなに頭の回る人と久しぶりに話したい。
また自覚のない「なんか」を言い当ててもらえるかもしれないし、ただおかしいことを言って笑わせてくれるかもしれない。
今度こそIQを聞いてみようか。

元バイトのそのお店を覗いたら会えるだろうか。
どこの支店にいるか教えてもらえるだろうか。
当時のバイト仲間で、誰か連絡のつけられる人もいるかもしれない。
忙しいだろうか。時間をわたしのために作ってもらえるだろうか。

散々にお世話になった、そしてこれでもかというくらいに仲良くなれたつもりの店長。
すぐでなくていいのでもう一度、顔をあわせることができたらなと思っている。