思い出すのは、14歳の冬。片思いの相手に告白して振られた時のこと。

クラスメイトに渡したクッキー。この日は本命相手にも渡せたけれど

中学生だった当時、バレンタインデーにチョコをくれた人たちへのお返しを、ホワイトデーの日にまとめて返すのが私のやり方だった。
2月は部活で大きな大会があり、丁度バレンタインは忙しく、チョコを作っている暇及び元気がなかったため、少し落ち着いた3月のホワイトデーに返すというやり方でバレンタインデー・ホワイトデーの文化を楽しんでいた。

バレンタインデーと言えば勿論チョコなので、クラスの女の子達から沢山の友チョコを頂いていた。ということで、そのお返しはホワイトデーのお返しの意味に沿って、クッキーを贈っていた(友チョコを貰ったのだから、こちらも友達としての気持ちを返すべきであるという自論は中学校の三年間続いた)。

この日は、それを本命の相手にも渡すことに成功した。
皆に配っているからあげる、という体で、他の人に配った流れで彼の手にも載せた。

その日の夜、彼から渡したクッキーに対するお礼のメールが届いた。
私はそこで、自分の気持ちを伝える事にした。

衝動に駆られて伝えた「好き」の言葉。その日のうちに返事が来た

親友が意中の相手に告白した、という話を聞いて触発されたことが大きかった。
本当は伝えるつもりなんてなかった。だけど、ここで言わなきゃいつまでも言えないという衝動に駆られて、そのメールの返信で「あなたのことが好き」という事を書いて送信した。
送信ボタンを押した後、言ってしまった、という何とも言えない喪失感、取り返しのつかない感覚に襲われて、しばらくその場を動けなかった。

その日の内に返事は返ってきた。ガラケーの背面画面に彼の名前が表示された時、いつもとは違う緊張感を感じた。
告白の返事はノーだった。他に好きな人がいる、と言われた。

「ほたて子さんなら良いかな〜と思うけれど、やっぱり気持ちって簡単には変えられないので…」という文章が印象的、もとい、グサッと心に刺さった。

だとしても、あの頃の私は、彼に「好きです」と伝えた後、どうしたいのか、説明出来るだろうか。
おそらく、できなかった。いつも、一目見るだけで緊張して、言葉が出てこなかったのだから。
好きな事について話すメールや、日々のおしゃべりが、ずっと続けば良いと思っていただけ。きっと望んでいたのはそれだけだった。

あの時逃げずに本命チョコを作っていたら。大人になって感じる気持ち

告白した後も、彼との友人関係は卒業するまで続いた。そして、その関係が恋人に変わることはなかった。
私はなんだかんだでずっと彼の事が好きだったし、きっと彼も私の気持ちには気付いていたと思う。彼が告白の返事で返してくれた言葉の通り、気持ちが簡単に変わらないことを私にも当てはめて考えてくれたのかななんて、うぬぼれたことを思った。

「友チョコだよ」なんて誤魔化したり文字に逃げたりするくらいなら、本命チョコを作って呼び出して、好きだと言ってみたらよかった……なんて思うことができるのは、時間が経って少しは大人になったからなんだろうな、なんて過ぎたことを思い出して、感想が出てくる。

今年はバレンタインの日に、彼氏にチョコレートのお菓子を作って贈った。
もう緊張していることを言い訳に、クッキーを贈ることはない。