主人と出会って結婚し、早10年が経った。
その間に出産も経験し、最近は専ら子育てに追われる日々。なかなか自分のことには目が向けられず、買い物に出かけても自分の物より子どもの物ばかり購入してしまう。我が子が体調を崩すと他人事とは思えず、私のほうが具合が悪くなるのではないかというほど不安に思ってしまう。
気づくと、どっぷり「母親」になり、どんどん自分に関しての優先順位は低くなっていった。
そんな私がある日突然、恋をした。

突然というのは、少々盛ったかもしれない。恋というのも盛った。でも、この10年において、幸か不幸か、夫以外に夢中になれる相手が現れなかった自分には、その出会いは衝撃的だった。

お相手は某ジャニーズグループ。私のようなぺーぺーのジャニオタが語るには古参の方には申し訳ないので、ここではあえてグループ名を伏せさせていただきたい。

足を踏み入れた沼は、想像以上に深くどこまでも

きっかけは、すでにファンクラブ入りしていた妹の存在だ。ずっと前から推しを熱く語り、ライブに足繁く通う妹に、最初は「何で?」だった。
いくら想い続けても相手は雲の上の存在で、なかなか認知もしてもらえない。認知目的で“ヤラカシ”になる人もいるようだが、常識的に考えてメンバーの迷惑になることをあえてするのは頂けない。

自分が相手を想う分だけ見返りがないのは悲しい気がして、昔から手の届かない存在、例えば芸能人には、無意識で想いを注ぎすぎないようにしていた。
しかし、母となり丸く家庭に収まってしまった自分とは真逆の、現実世界では男に全く興味がなくキャリアに生きる妹をここまで夢中にさせてしまう彼らに、単純に興味をもった。

そして、とうとう私も沼に足を踏み入れてしまう。
最初は上の子を保育園に送り出し、下の子がお昼寝をする少しの時間だけ。YouTubeや妹から借りたDVDを見てみた。

だが、すぐに彼らの人柄やダンスレベルの高さの虜になり、視聴時間が長くなっていった。気づくと、もうすぐ上の子のお迎えに行かなければということもあった。それだけ時間をあっという間に感じてしまう、自分の中で夢中になれる存在に彼らはなっていった。

夫から恋をしていると指摘されるほど。でもそのおかげで家庭円満

最近では、その時間だけでは間に合わず、夫が在宅中でもリモコンの主導権は私。某グループのダンス動画を見て幸せに浸っている。何なら夫にも素晴らしさを語り、布教活動に勤しんでいる。

「最近、好きすぎてしんどいんだよね」
「……それって恋なんじゃない?」
先日とうとう(何を言わせてるんだという感じだが)夫から恋愛をしている疑惑も言い放たれた。

もちろん、彼らが自分にとって雲の上の存在であることには変わりなく、愛でているだけで十分なのは間違いないが、慌ただしい日常以外に気を緩められる非日常があることは安らぎだと感じるようになった。
育児の中でイライラすることも多々あるが、そんな時にポッと頭の片隅にいる彼らを想うと気持ちが凪いでいくことも多い。

最初はあまり肯定出来なかった“推し事”が、今では自分のポジな部分を保つには欠かせないことになった。
近頃は、もうすぐ2歳になる息子も影響を受けてか、はちゃめちゃながらダンスを披露してくれるようになった。家庭内ポジの伝播は続きそうだ。