私にとって仕事とは、「自分を高めながら社会に貢献すること」だ。そう考えるようになったきっかけは、学生時代の頃のアルバイト経験にある。

学生時代は、さまざまなアルバイトを経験した。試食販売、アパレルブランドのセールスタッフなど単発のアルバイトや、マンションのモデルルームの受付、住宅展示場のスタッフなど。
中でも、住宅展示場のアルバイトは一番長く続き、大学1年の頃から卒業まで続けた。

住宅展示場でのアルバイト。どうしたら客をモデルハウスに誘えるか

私は、某住宅メーカーのモデルハウスで、呼び込みスタッフとして働いていた。
住宅展示場には、多くの住宅メーカーのモデルハウスが並んでいる。各モデルハウスには有名キャラクターの大きなぬいぐるみや、子どもに人気な風船などが飾られていた。来場客もファミリーが多く、みんな幸せそうな顔をしている。
私はこの「幸せな空間」と、「素敵な家」が好きだったので、高校を卒業する前から、「大学生になったら住宅展示場でアルバイトをする」と決めていた。

私の仕事は、自分が担当するモデルハウスの前に立ち、客を呼び込むことだった。実際にアルバイトに入る前の研修では、「住宅メーカーの売上は来場者数に比例する」と教わった。
たしかに、モデルハウスを訪れる人全員が必ず購入を決めるわけではないが、そもそもモデルハウスに客が入らなければ、営業担当は家を売ることはできない。

私は、「どうしたら住宅展示場に来た客をモデルハウス見学に誘えるか」を一生懸命に考えた。客がモデルハウスの前を歩いて横切る時間は、だいたい10~15秒だ。その短い時間の中で、どのような情報を伝えるべきか考えた。

例えば、男性客には「この家は重量鉄骨造りで、耐震性にとても優れている」など、構造面でのアピールポイントを伝える。女性客には「家事動線がしっかり計画されていて、炊事や洗濯が楽」など、家事のしやすさを伝える。また、ご年配の客には話すスピードを少しゆっくりにするなど、話し方も工夫した。

たかが、アルバイト。されど、アルバイト。仕事は自分で生み出すもの

こうした自分なりの努力が功を奏したのかは分からないが、私はいつも「きょうは○組呼び込むぞ」と目標を立て、だいたいはその目標を達成することができた。

モデルハウスの呼び込みのアルバイトは、派遣会社に登録をし、派遣会社側が住宅メーカーを指定する形式で仕事が決まった。だが、客を順調に呼び込めるようになると、住宅メーカーの営業担当者から、「●●さん、来月もまた呼び込みに来てね」と声を掛けてもらえるようになった。営業さんから「いつもたくさんお客さんを入れてくれてありがとう」と感謝されるのが私のやりがいであり、求められることが喜びになっていた。

私がここまで目標達成にこだわれたのは、ある人からの言葉があったからだ。それは、マンションのモデルルームの受付のアルバイトをしたときに知り合った、先輩女性からの一言だった。

その先輩は、
「たかが、アルバイト。されど、アルバイト。自分の人生の時間をアルバイトに費やすなら、『どうしたらもっと良くなるか?』を考えて仕事をしたほうが、自分のためになるんじゃないかな」
と、彼女の仕事観を教えてくれた。
アルバイトにはノルマも罰則もないが、「仕事は自分で生み出すもの」ということを、その先輩に教わった。

社会人5年目、「自分を高めながら社会に貢献すること」が私の仕事

私はいま社会人5年目で、都内で会社員をしている。新卒では出版社に入り、入社3年目で転職をした。現在もメディア系の仕事をしている。

学生時代のモデルハウスのアルバイトとは全く違う業界に就職したが、今でもアルバイト経験は活きている。
仕事では、いつも誰かに言われる前に自ら動くよう心掛け、「自分で仕事を生み出す」ことを実践しているつもりだ。すぐに結果はついてくるわけではないが、いつか自分の努力が実を結ぶと信じている。

私にとって仕事とは、「自分を高めながら社会に貢献すること」だ。
今日の自分よりも明日の自分――。そんな風に思えるように、私はこの先も、自分の仕事と向き合いたい。