「君は将来、芸術の道に進んでも絶対にやっていけると思う」
まだ幼かった私と真剣に向き合い、私の才能を信じてくれたあなたに、もし今また、会えたなら。

父との関係やいじめで自信がなかった私が出会った、美術教師の担任

私はとある大学の芸術学科で、染織を学んでいる女子学生である。四月から四年生だ。ちょうど就職活動中で、自分に自信がなくなることが多々ある。そんなとき、いつも思い出す人がいるのだ。

その人は私が中学一年生の時の担任の先生だった。担任を持つのは初めてだと言っていて、見た目もひょろっとしていたため、頼りないなどと思ったものである。
彼は美術の先生だった。声が小さくて、クラスの不良にはよく無視されていたが、穏やかな話し方が私は好きだった。
私はというと、絵をかくのが好きな普通の中学生だった。自分で言うのは何だが、成績は良いほうで、真面目だった。
二つ年上の姉がいて、その姉に影響されて生徒会にも入っていた。生徒会が原因でいじめられて、それを先生に助けてもらったこともあるのだが、それはまた別の話だ。

絵をかくのはただ好きだっただけで、将来に活かそうなんて少しも思ったことはなかった。しかし、美術の授業で、先生に花丸をもらったり、褒められたり、上手な作品として美術室の後ろに飾られたりするのはとても嬉しかった。

私の父親はあまり褒めるということをせず、どちらかと言えば満点をとって当たり前みたいな人だった。何時間も私を床に座らせたまま説教をするような人だったこともあって、私は当時、父親からの愛情をあまり感じられなかった。
いじめを受けたこともあって、私は自分に自信のない子になっていた。父に認めてもらえない、いじめられるような出来の悪い子だと思っていたのかもしれない。

私の将来を決めた、三者面談での先生の思いがけないひとこと

そんなとき、学校で三者面談があったのだ。中学一年生ではまだ少し早いかもしれないが、将来は何になりたいかと先生に聞かれた。
私は自信もなかったし、何になれるのかもわからなかったため、まだわからない、特にない、みたいなことを言った気がする。何が好きか聞かれ、美術は好きだと言ったと思う。
そのあたりの記憶はほとんど消えてしまったけれど、その後先生に言われた言葉だけは、ずっと、ずっと覚えている。
先生は、それなら、と。
「君は将来、芸術の道に進んでも絶対にやっていけると思う」

とても真面目な顔と声でそう言った。そんなことを言ってくれる人がいるとは思ってもみなかった。
隣にいた母はとても驚き、そうなの?と私に聞いた気がする。私はこの上なく嬉しくて、少し恥ずかしくて、中学生らしく、ニヤニヤしないように下唇を噛んでいた。
その時私は、芸術の道に進むことを決めたのだ。

先生は覚えていないかもしれないし、何気なく言ったのかもしれない。しかし、先生の言葉が一人の生徒の人生を変えたのは事実である。
自分の才能を100パーセント信じることは難しいが、自信が枯渇しそうになったときは、先生の言葉を思い出すのだ。私は先生に芸術の才能を認められた人間なのだと思えば、自信が少しずつ湧き上がってくる。

先生のあの時の言葉が、私の自信であり一生の支えです、と感謝を伝えたい

先生は私が中学二年生に進級する際、離任してしまい、行先も覚えていなければ連絡先も聞いていないため、もう一度会うことは難しいと思う。
でも先生にもし今会えたなら、感謝の気持ちと、今の私について話したい。そして、先生が、初めての担任で救った生徒がいるのだと教えたい。
先生があの時言ってくれた言葉は私の一生の支えになる。自分の才能を認めてくれた人がいるというだけで、人は生きやすくなる。先生に伝えることで私と同じように先生の自信につながらないだろうか。中学生の時はできなかったけれど、今なら、先生に素直に感謝を伝えられると思う。

先生の言った通り芸術の道に進んでいること。どんな作品を作っているかということ。
先生のおかげで自信が持てること。先生の言葉に救われたこと。
ずっと先生の言葉を覚えていること。

先生、本当にありがとう。