もうすぐ、ばあちゃんの誕生日だね。恒例のおめでとう電話は今年からはもうできないから、こっちの世界から全力で念を送るね。
ばあちゃんの人生、どうだった?聞いたことなかったね
この前の年末、「明日実家に帰ったら、ばあちゃんとどんな話をしようかなあ」なんて考えながら荷造りをしていたら、ばあちゃんが亡くなったって連絡が来たんだよ。
突然すぎるよ。せめて私が帰るまで、もうちょっと待っててくれてもよくない?
たくさん泣いたけど、お葬式のときは頑張って笑顔で見送ったの、見てた?
そっちの世界はどう?
いろいろ伝えたいことや聞きたいことはあるけどさ、一番知りたいのは、ばあちゃんの人生はどうだったのかってこと。
私のじいちゃんでもある、ばあちゃんの旦那さんは、40代で亡くなったんだよね。
そこからばあちゃんは働き始めて、まだ学生だった2人の子ども―私のお母さんと叔父さんを立派に育てた。
これくらいの話はお母さんから聞いていたけど、ばあちゃんから聞くことはなかったよね。ばあちゃんはいつも、自分のことは後回しで、私や他の家族のことを気に掛けてくれていたから。
ばあちゃんが何を感じて、何を原動力に生きてきたのかを、ばあちゃんの言葉で聞きたかったよ。なんだかそんな真面目な話、照れくさくてできなかったじゃん?
早く亡くなった旦那さんのために、あんなに頑張ったのかな
なんでばあちゃんの話を聞きたいかっていうと、私が今、人生に迷っているから。
昔からお転婆で生意気だった私が悩んでいるだなんて、笑っちゃうでしょ。
私、つい最近仕事を辞めたの。今まで頑張ってきたけど、突然糸がプツンと切れて、頑張れなくなっちゃった。この先、具体的にどうしようかなんて何も浮かんでこないの、おかしいよね。
ばあちゃんは40代のときに旦那さんを亡くしてから、70歳近くまで働いていたよね。
なんでそんなに頑張れたの?なんでそんなに強く生きることができたの?
聞きたくても、もうばあちゃんに会うことはできないから、自分なりに考えたことをここでばあちゃんに伝えるね。
ばあちゃんは、「もし自分の身に何かあったら、これを一緒にお棺に入れてほしい」って、じいちゃんのお骨の一部の包みを、私のお母さんに託していたんだね。
この前のばあちゃんのお葬式のとき、胸に旦那さんのお骨を抱いて旅立ったばあちゃんを見て、笑顔で見送るはずだったのに、ちょっと泣いちゃったよ。
そんなばあちゃんの旅立つ姿を思い出して考えついたんだけど、ばあちゃんは旦那さんを本当に愛していたから、あんなに頑張れたんじゃないかな?
天国にいる旦那さんに胸を張れるように、旦那さんの血を引く子どもや孫のために、ずっと頑張ってきたのかなって思ったよ。
私はじいちゃんに会ったことはないし、どんな人だったか聞いたこともないけど、絶対に素敵な人だったと思う!今度、お母さんに聞いてみるね。
人生の迷子になってるけど、ばあちゃんみたいになりたいな
ばあちゃん、今頃、やっと旦那さんと再会できたんだね。
離れていた40年間の積もり積もった話が止まらないと思うけど、少しでいいから私のことをじいちゃんに紹介してね。
「わたしたちの一番下の孫は、お転婆で生意気だったのよ」ぐらいでいいから。
そうそう、ばあちゃんには会わせることができなかったけど、私には、この人と結婚するんだろうなっていう相手がいるんだよ。すごく優しくて、一緒にいると安心する、ばあちゃんもきっと好きになる好青年だよ。
ばあちゃんとじいちゃんみたいな夫婦になって、いつかは子どもや孫が生まれて、笑顔で暮らしていけたらいいな。
その途中で、ばあちゃんが何を原動力に生きていたのか、答え合わせができたらいいな。
愛に溢れていたばあちゃん。時々厳しかったけど、いつも笑顔で太陽みたいなばあちゃん。
私もばあちゃんみたいな人になる!
今、私は悩んでばっかりで人生の迷子になっているけど、それだけは譲れない、私の人生の目標。
ばあちゃん、ずっとずっと大好きだよ!