マッチングアプリで出会った男性にラーメン1杯で返されて腹が立った

これは、少し前にマッチングアプリで出会った人の話。

わたしはマッチングアプリに登録しては退会して、というのを何度か繰り返していたが、なかなか良い出会いはなかったので、今回も特に期待して登録した訳ではなかった。
その人とはアプリ内のダイレクトメッセージで数回やりとりをしていたが、月末でアプリをやめるからLINEを交換して欲しいと言われた。

以前、隣町に住む年下の大学院生とマッチングし、言われるがままにLINEを交換して、会う約束をしたが、特に会話もなく、ラーメン1杯で帰され、自分の移動時間の方が長く掛かったという嫌な経験がある。

お互いの写真も交換していて、1度電話もしていたので、好みではないことは向こうも薄々わかっていただろうし、自分自身、男ウケがいい見てくれではないことは理解している。
だからこそ、たった1杯のラーメンで済まされたことに腹が立った。1人の人間として、男として、初対面の女性に対してあまりにも失礼ではないだろうか。
帰り道、募った怒りをぶつけるように、1人、車の中で、特段好きでもないBIGBANGを大声で歌った。

LINEを交換した男性から苦手な電話の誘い。緊張のなか話し始める

そんなことがあった数日後の出来事だったので、LINEを交換したいと言われた時は、正直このまま放置してしまおうかと悩んだ。
しかし、マッチングアプリをやっている男性をひとまとめにして悪く捉えて決めつけてはいけないと思い、「いいですよ」とだけ送った。

するとIDが送られてきたので友達追加をして「よろしくお願いします」と打ち、送信ボタンを押した。
そのままInstagramを見ていると、数分後、iPhoneのバナーが「よし、電話しよ」と、クルッと通知した。

……なぜ、電話?なんにせよ、わたしは電話が苦手なのだ。自分の中にあるものをアウトプットすることに時間が掛かるし、相手が退屈しないように本来のテンションより高めになってしまう。ましてや初対面で一体何を話すというんだ。いや、しかし、ここで無視してしまったらせっかく柔軟に考えてLINEを交換した意味がなくなってしまう。
さまざまな思考がわたしの脳内でサミットを始めたが、結局また、「いいですよ」と送っていた。

23:30頃だったか、掛かってきた電話のバイブが空間の緊張を高め、すぐに出られずにいると短めのコールで切れてしまった。
心拍数を抑えるように心臓あたりをトントンと叩き、電話をかけ直した。
相手のコール音がピタゴラスイッチの歌だったので、なんだか拍子抜けをしたが、そのおかげで相手が電話に出ても、あまり構えずに話し始めることが出来た。

お互いの過去を語り合い、気がつけば2時間話しつづけていた

最初は当たり障りない会話をしていたが、お互いの過去の話をしていく中で、相手が結婚間際で彼女と別れたことや、死んでもおかしくないほどの大きな事故に遭って大学を辞めたことなどを話してくれた。初対面の年下の小娘に自身の話をしてくれたことが嬉しかった。それと同時に、この人に自分の話も聞いて欲しいと思った。

わたしは適応障害になって休職を余儀なくされたばかりだった。昔のトラウマがあり、自分の意思で始めたことを途中でやめることが辛かった。
こんな話を聞かされて相手がどう思うか、考えなくもなかったが、話したくて仕方がなかった。
引かれたなと思ったが、話し終わると相手は「でもさ、若いうちにいろいろやってみて、自分に合うものを見つけられる人の方が素敵じゃない?」こう言ったのだ。
本心なのか、その場しのぎなのか、そんなのどうでもよかった。それくらいわたしの心は救われた。
他にも、わたしがこれからやってみたいことについて真剣に聞いてくれて、現実的な意見もくれた。

驚いたことに、気がつくと、2時間も話していた。
流石にそろそろ寝ようと電話は切れた。
翌日、お礼のLINEをすると「はいよーまた連絡するよ」と、軽めの返信。
きっともう連絡が来る事はないだろう、そう思って画面を消した。

素敵な人生の先輩との出会い。思いもよらず手にできた欲しかったもの

しかし、翌日からも仕事終わりに電話をくれるようになった。相手にとってはただの暇つぶしかもしれないが、それくらいで丁度良かった。
毎回、今日何をしていたか、明日は何をするのか聞いてくれた。味気のない日々を過ごしていたが、「いいんだよ、いまはそういう時間が必要なんだから」と認めつつ、「少しずつ、社会に戻る準備もしていかないとね」と背中を押してくれたりもした。
わたしはその電話が楽しみになっていたし、自分から電話をするようにもなった。
社会からはみ出たわたしにもう一度やり直すためのきっかけとやる気を持たせてくれた。
わたしが欲しかったものはこれだと思った。

休職や適応障害になったことも含めて、ボロボロになった経験は何一つとして無駄にはならない。
受け止めるだけでなくきっかけを与えてくれる人の存在、自分自身のやる気、これがあれば着実にまた歩き始めることが出来る。

期待していなかったマッチングアプリ、思いもよらぬ形で良い出会いをしてしまった。
恋人を見つけることだけが出会いではない。
素敵な人生の先輩に出会い、欲しかったものを手に入れることが出来たと思う。さあ、動き出そう、そう思えたから。
いつかわたしも、誰かのきっかけになれるだろうか。