旅行の話題で、「誰と行ったの?」と聞かれることが苦手
何気なく、旅行に行ったことを話題に出したとき。
世間話で観光地の話を振られ、そこに行ったことがあると答えたとき。
必ずといっていいほど聞かれる「誰と行ったの?」という言葉。私はそれを聞かれることが苦手だ。
「一人で行きました」と答えたときと、「友達と行きました」「姉と行きました」など、誰かと行ったと答えたときの相手の表情や声色に明らかな違いがあると思ってしまうからだ。
例えば、同期と旅行の話になったとき。
好きなアニメの聖地巡礼をしたときの写真を見せながら、浅草旅行の話をしていたときだった。
同期からは「誰と行ったの?」と聞かれた。私は一人旅行が好きなので、このときの旅行は一人でしていた。
正直に「一人で行ったよ」と伝えると、相手は「そうなんだ……」といった風に、先ほどまでと明らかにテンションが下がったようだった。
旅行は誰かと行くものだと思っているんだろうな。そんな風に考えながら、私は別の話題に変えたのだった。
友達と行ったと嘘をつき、半分以上架空の旅行話でその場を切り抜けた
こういったことは他にもあった。
バイト先のスタッフさんと雑談をしていたとき。県内にある有名な景勝地の話になった。バイトの後輩が行ったという話を聞き、私にも行ったことがあるか聞いてきたのだ。
ちょうど1年くらい前、その景勝地の近くを車で通った際に見かけた防波堤が記憶に残っていて、また見たいと思ったため、高速バスと電車を乗り継いで訪れたことがあった。もちろん一人で。
「夏橙さんは誰と行ったの?」
そう聞いてくるスタッフさんに対して、私は作り笑いをしながら、
「友達と行きましたよ」
と返答した。
嘘をついた。本当は一人で行ったし、何なら旅行の一番の目的は話題に上がっている景勝地ではなく防波堤のほうだ。しかしそれも、変わっていると思われそうで言えなかった。
私の返答に対してスタッフさんは「いいね! それでそれで?」とさらに質問をしてきた。
嘘をついた罪悪感はあったが、友達と行ったと答えただけで話が弾むのは、誰かとする旅行が至高という風潮のようなものに何とも言えなくなった。
結局その場は、半分以上が架空の旅行話をすることで切り抜けた。
不甲斐ないとは思うが、嘘をついてでも、「一人で旅行をする人」というレッテルを貼られるのが嫌だったのかもしれない。
誰かとではなく一人での旅行も楽しみにしている人がいる
本音を言えば、私は一人でする旅行が好きだし、一人で旅行をすることを恥ずかしいと思いたくはないと感じている。けれど、誰かとの会話の中で「ひとり」で楽しんだこととして話すと会話が弾まなくなってしまうことに関しては例外だと感じざるを得ない。
それに、仲のいい友達に旅行の話をした際に言われる、「誘ってくれればよかったのに」という言葉も、一人で旅行するよりも誰かと旅行したほうが楽しいと言われているようで何とも言えない気持ちになってしまう。
私は旅行を「ひとり」でするのが好きだし、楽しみだとも思っている。
誰かとではなく一人での旅行も楽しみにしている人がいる。そういう考えている人も生きやすい世の中になってほしいものだと感じた。