私には父、母、弟と3人の家族がいる。小学校の頃まではよく家族旅行に出かけていたし、喧嘩もするけど家族仲は悪くないのかなと思っていた。

両親の喧嘩が絶えなくなり、思春期真っ盛りの私は反抗するようになった

家族が我慢と努力によって形作られていると気づき始めたのは、小学校高学年になってからだった。母が私に父親への不満を言い始めたり、家に帰ってくるのを嫌がったりすることが頻繁にあった。
母の不満ばかり聞いていた私は、父親が悪いのだと思った。アニメみたいに世の中が善と悪で分かれているのなら、短気で身勝手な父が悪く、それを我慢する母が正しい。だから私は母の味方になる、そう思った。

その後、家族間の歪は時間が経つほどに深くなっていったように思えた。あるいは、奥に潜んだ根本の歪みが徐々に姿を現していったのかもしれない。
母が病気になり、両親の喧嘩が絶えなくなった。弟も心に不調をきたし、思春期真っ盛りの私は両親に反抗するようになった。両親は学校に行けなくなった弟と自分たちのことでいっぱいになり、私は家族とのつながりが見えなくなっていった。家に帰りたくなくなり、学校が終わってからまっすぐに帰宅することは減った。

父が悪で母が善なのではなく、父も母にもそれぞれの考えがあるのだ

ある時、あるアニメが私に新しい価値観をもたらした。
そのアニメでは、世間的に悪とされる集団が自分たちの生活のために戦い続けていた。自分たちなりの正義を持ち、主人公は世間のもつ正義とその集団の正義の間で翻弄されていた。

その世界から、私は人それぞれに正義があり、世の中は完全に善と悪に分けることができないと感じた。そこから、私は父が悪で母が善なのではなく、父も母にもそれぞれの考えがあり、それに善悪をつけることはできないのではと考えるようになった。そして私も、家族に対して自分なりの考えを持つようになった。

一度持ち上がった離婚話。そして今、家族は大きな変化を迎えている

私が中学三年生の時、一度だけ離婚話が持ち上がった。これまで作り上げられたものであっても、それが崩れていくことに悲しさも感じたが、家の中の暗い雰囲気からようやく解放されると嬉しく思った。
しかしながら結局その話はわずか2日で解消され、私はまたもとの世界に引き戻された。その後私は高校生の時に1年間海外へ留学し、大学に入ってからは一人暮らしを始め、家族と徐々に距離をとっていった。

そして今、私の家族は大きな変化を迎えている。
弟が大学に合格し、春から一人暮らしが決まった。母の病気は落ち着いたものの、心の不調が原因で、日常生活を一人で送るのが困難になり、父との間に信頼関係を結ぶことは難しくなっていた。そのため、父と母はそれぞれの実家に戻る予定になっている。長年の間形作られてきた家族は、ついに4人全員が別々の場所で暮らすことになった。

なぜ家族の形を維持し続け、形骸化してもなお続けてきたのか

今私は、両親が長年の間形作ってきた家族の意義を考えている。それが作られたものだと気づいたとき、信じていたことが心の中で音を立てて崩れだし、私は裏切られた気持ちになった。私が信じていたものは両親によって対外的につくられたもので、私はそれに騙されていたんだと思った。

けれどもなぜ初期から歪がありつつも、それを維持し続け、形骸化してもなお続けてきたのか。互いの信頼関係がなくなっても、相手に対して愛情のかけらもなくても、なぜそれを守り続けたのか。今の私は形作り続けたことが本当に家族にとって幸せだったとは思えていない。4組に1組が離婚しているといわれる現代の日本において、似たような経験をした人も多いのではないかと思う。みなさんはどうお考えだろうか。