今一番ほしいもの……といっても、とくには思い浮かばない。
幼少期の数年間は、お金に厳しい祖母のもとで紙すら買わない節約生活をしたりしたから、今も数十万単位でがっつり貯金するタイプだし、あまり物欲は強くない方だと思っている。「衝動買い」なんて、経験したことすらない。
最近になってようやく、好きなアイドルのアルバムを買うようになったくらいだ。
新しいスニーカーとか、化粧品とか、まあほしいっちゃほしいけど……みたいなものはあるが、別に今なくてもいいし買う予定もない。
なので、今すぐではなくていいから、「いつか手に入れたいもの」を書こうと思う。

それは、ピアノだ。家で弾きたいから、ヘッドフォンがつけられる電子ピアノ。
私はピアノを習ったことがなく、趣味の範囲ではあるが、実に10年間近くピアノを弾いている。誰に聴かせるわけでもないので、好きな曲ばかり練習しては弾いている。最近は簡単な作曲に、耳コピやアレンジもできるようになった。

ドレミの位置も知らなかった日から、「伴奏者」になる日が来るなんて

私とピアノの出会いは、中学時代だった。合唱曲の伴奏がかっこよくて、自分も弾きたくなったのだ。もともと音楽のインスト(歌なしの伴奏だけ)とか、映画のサントラ(挿入曲)だけ聴いたりすることもあったから、バックミュージック的なものが好きだったのだと思う。
だけど習ったことがないので、見よう見まねで必死に練習した。家にはピアノがなかったので、学校の音楽室のピアノや、貸しスタジオを使ったりしていた。音符はかろうじて読めたが、大体暗記して弾いていた。最初は下手だったが、たまに音楽の先生に聞いたりして、毎日弾いていたらそれなりにうまくなっていった。

そして高校時代、ひとつの夢ともいうべき、合唱曲の伴奏者を務めたのだ。難しい部分は簡単なバージョンに改変したが、人前でピアノを弾いたのはこれが初めてだった。
大きなステージで弾く、立派なグランドピアノ。発表会もしたことがないのに、何百人の前での演奏をかなえた。感動して泣きそうだった。
ドレミの位置も知らなかった日から、「伴奏者」になる日が来るなんて。趣味でここまで来られたなんて、信じられなかった。当日は達成感と嬉しさで胸がいっぱいになり、不思議なほど緊張しなかった。

自分の部屋に電子ピアノが欲しい

今もしょっちゅうピアノは弾いているが、相変わらず貸しスタジオ通いだ。だから、自分の部屋に、夜中でもヘッドフォンをつければ弾ける電子ピアノがほしいなあと思っている。

楽器屋で色々見てみたりしたが、やっぱり値段が高いものは、鍵盤のタッチや音が違う。私が求めるグレードのものはウン十万円するが、安物よりは絶対にそっちを買った方が後悔がないだろうなと思う。

ピアノは私の一生の趣味。だからいつか、納得のいくピアノを買いたい

ピアノは多分、私の一生の趣味になるだろう。たとえ独学でも、ずっとやっていれば、それなりのレベルに到達できると教えてくれたピアノ。ただのあこがれから、本物の舞台へと連れていってくれたピアノ。「好き」の力は計り知れない。だからいつか、もっとお金をためて、自分の納得のいくピアノを買いたいと思う。きっと嬉しくて泣いてしまうと思う。