電化製品好きのおじ様から手に入れた、自分では一生買わない掃除機

馬鹿げた話だが、私は掃除機を買うのに1年ほど熟考した。
最初に使っていた有線のスティック型掃除機は、主人が大学生のときに買ったもので、同棲を始めた社会人3年目のときに寿命で壊れた。
次のを探さなくてはと思っていた頃、主人の職場の方が一般人による不用品の無料提供や低価格販売ができる「ジモティ」というアプリにハマっていて、主人もそれに興味津々だった。彼に掃除機が必要だと話すと、その数日後にはサイクロン式のキャニスターを、電化製品好きのおじ様から4000円で譲ってもらってきた。

自分では一生買わなそうな、その最新っぽいフォルムに「ジモティはすごいなぁ」と感心し、心躍らせ使ってみたが、使い続けるといくつか問題点がでてきた。
まず(私からしたら)画期的な、カラフルな毛のブラシがついてるヘッドが回らなくなった。よく見るとヘッドについてる小さな2つの車輪に髪の毛が絡み、カッターなどで解していかないと回らなかった。また紙パック式でないサイクロンは細かい塵が溜まりやすい上、吸引力がこれまで使ってきたものと比べ圧倒的に無かった。これはサイクロンの仕組みのためによるが、これらの欠点はかなり手間になり、掃除機をかけるのが嫌になった。

最新の掃除機を手に入れて、自分に本当に掃除機が必要なのか考え直した

私はミニマムに暮らしたいため、物を買うときはたとえ必需品であっても、なぜそれを買いたいか自問自答してから購入する。
会社員で自分のことも精一杯だったときは、この思考フィルターは皆無だった。営業でもっと説得力のある会話がしたい、もっと大人に見られたいと思っており、見た目から入ろうと当時は高い化粧品を買っていた。今思えば高級なものは自分をよく魅せると思い込んでいたが、高いものを買っても日常生活は変わらないため、薄化粧の私は化粧品を変えたところで何も変わらなかった。
今回の掃除機も同じだ。会社員を辞め、時間がたくさんある主婦になった今、良い掃除機を買ったところで頻繁に掃除するようになるのだろうか。きっとならないだろう。
主婦なのにと自責したがそれが現状だし、主人も怒らないしなと今の自分を受け入れることにした。

こうして、掃除機は我が家に本当に必要なのかを本気で考えた。掃除機を使わずいろいろ試した結果、掃除機よりクイックルワイパーを一回かけるだけでも十分なのではと思い始め、手間のかかる掃除機を手放すことにした。

次の掃除機は、熟考したあげく評判のよい売れ筋商品を買った

そうして1年経った。クイックルワイパーでもゴミが取れるようにいろんな商品を試したが、砂利などの固形物は取れるわけもなく、やはり掃除機が必要だと思った。

掃除機の必要性を感じてからも、次は吸引力のあるキャニスター型、サイクロンじゃなくて無駄な電気を使わない紙パック式などと、どれを買うか悩みまくり、電気屋への視察も数回した。
ネットでも情報収集したが、色々ありすぎていまいち購入に踏み込めず、もはや購入しないのではと自分でも思い始めたため、結局評判の良い、スティック型のコードレスを買った。有線に比べ、バッテリーやその充電器を購入しなければならなかったが、かけたいときにさっとかけるという手軽さは私の腰を軽くした。これから掃除するかしないか悩む間も無くかけられ、吸引力もあり数分で全ての部屋をかけられる。1日のちょっとした習慣になった。

掃除機の買物をめぐって、自分がポジティブになったことに気づいた

しかし失敗点もあったのだ。バッテリーを取り付けると恐ろしく取っ手が重く、かけていると腕や腰が痛くなる。
妊婦になったり子育てが始まったらかけられるかしらと一瞬不安がよぎったが、それを上回る手軽さのため今日も掃除機をかける。
それに以前より失敗しても落ち込まない自分がいて驚いた。きっと「これを買えば部屋がずっときれいになる」と物に期待せず、必要だから買うという私が求める本当の買い物の仕方ができたからだと思う。とても充実感があった。
また、一生使うわけでもないしなと完璧を求めない自分がいて嬉しかった。ネガティブな実家を出て、ポジティブな主人と結婚し一緒に暮らして、確実に自分は変わった。

今自分が1番欲しいもの。それは掃除機だと思っていたが、本当に欲しかったのは自分の小さな成長だったのかもしれない。