少し大人になって、彼と再会した。あの日から3年が経つ

愛とは、なんだろうか。
愛し愛されるとは、なんだろうか。
わたしは、ちゃんと愛を知っているのだろうか。
正直、自信はない。
だけど、わたしは今、愛に包まれている。
愛を感じて、生きている。

随分と、自由な愛をたのしんできた。
愛と呼べるのかすらわからない、そんな関係をたのしんできた。
若かった、と言ってしまえば、それまでなのかもしれない。
わたしの知らないことを教えてくれる人に、惹かれた。
大人って格好良いなと、思った。
自分も少し大人になって、それはただ生きてきた長さの違いだと知った。
そんな時に、彼に出逢った。

正確には、彼に再会した。
もうすぐ、あの日から3年が経とうとしている。
まさか、今日も彼の隣にいるなんて。
考えもしなかった。

正直少し物足りないけれど、彼の温もりに心から安心した

彼は、とても優しい人だった。
昔と変わらず、誰にでも分け隔てなく接する人だった。
落とし物を走って届けに行ったり。
次々通る人のために扉を押さえた手を離せなかったり。
道端で目が合った赤ちゃんに全力の変顔をしたり。
彼の優しさはいつでもどこでもだれにでも、無償で注がれていた。
そんな彼の笑顔が、輝いて煌めいて見えた。
わたしとは、全然違う人だと思った。

彼は、良い意味で“ふつう”の人だ。
それまで出逢ってきた恋人やらセフレやらお友達やらとは、似ているところがない。
側にいても、びりびりすることはない。
ただ、ぽかぽかと、心が穏やかになった。
あれもこれもそれも、がんばらなくちゃと思って生きてきたわたしには、正直少し物足りない。
だけど、そんな温もりに心から安心した。

彼のようになれる日はずっとこないだろうけど、優しさを蓄えた

彼と出逢って、なんにもない時間も愛でることが出来るんだと知った。
日常生活はもちろん、旅行先での予定もあんまり決めない彼に、腹が立ったこともあった。
せっかくの休日なのに、あれもこれもそれもやりたいのに。
わたしがそんな風に焦るとなりで、彼は「あのお店、美味しそう」と笑っていた。
そんな風に生きたいと思った。
朝寝坊してしまうなんて、有り得ない時間の無駄遣いだと思ってた。
それなのに、わたしを抱きしめて眠っている彼の寝顔が愛おしくてたまらなかった。
こんな感情が湧くなんて知らなかった。

ただただ、毎日を日向ぼっこするように生きる彼と、今日まで3年くらいを過ごしてきた。
わたしが彼のようになれる日は、たぶんこの先もずっとこない。
だけど。
わたしは、前よりほんの少し、優しくなれた気がする。
彼の優しさに包まれて、わたしは優しさをたくさん蓄えた。
今度は、その優しさをだれかに届けられたら。
きっと、この優しさが、愛なんだと思う。
愛なのかな、たぶん。