出産って痛すぎない?
拷問レベルよ、あれ。
とは言え、私に産む痛みを語る資格はない。子どもがひとりいるが、帝王切開で出産したからだ。
しかし、経験して思う。あれでさえ過去一番痛かったのに、自然分娩はもっと痛いのか、と。

帝王切開は、こんなに簡単かと思うほど楽だった。麻酔が切れるまでは

帝王切開は、麻酔が切れるまでは楽だった。
当日。手術室のベッドに仰向けになり、腹を掻っ捌かれ、ぐにぐに押されたと思ったら、子どもが出ていた。元気に泣く我が子を横目に、胎盤を剥ぎ取られ、腹を閉じられた。1時間もかからずに病室へ戻された私は、呆然としていた。
こんなに簡単に産んじゃえるの?

予定帝王切開だったので、陣痛も経験していない。初産ならだいたい半日、長いと3日も陣痛が続くと、産院でもらったテキストに書いてあった。
恐ろしいことである。母に体験談を聞いたら、それはもう痛い、と遠い目をして語っていた。祖母なんて、帝王切開になって良かったじゃない、あんな痛い思いしなくていいんだから、と心の底から言っていた。

方々へ無事に生まれた連絡をし、一段落ついた頃。じわり、と腹が痛んだ。麻酔が切れてきたらしい。
自覚したらあっという間だった。内臓がねじ切れるのではという暴力的な痛みになすすべなし。後陣痛だ。伸び切った子宮が縮もうとするやつ。
あと、切られたところ、発火してるんじゃないかな。縫合されたとて、切腹と変わらないことをした。だから痛いのは当然にしても、これは痛すぎる。
痛み止めの投与が、術後何時間か禁止されていた。何故かは分からない。医学的なことだろうとは思うが。そのため襲いくる痛みを真正面から受け止めることとなった。
膨大な痛みを僅かでも軽減させたい。少しでもましな姿勢を求めて横になったり、背を丸めたり。動くのも血を吐きそうに痛いがじっとしていられない。1分ごとに時計を見て、時の遅さに愕然とする。あまりの疲労に意識が落ちるも、痛みにより30秒で覚醒した。

熱く刺さる拷問のような痛みに、二度と出産したくないと涙が出た

呻き苦しんでいたら、看護師さんが入室してきた。そして、悪露を出しますね、と言って何やら準備を始めた。
悪露。産後、子宮の出血や内容物、その他色々が混じったもの。生理みたいに出てくるやつ。それを出すとは、と意味を掴む前に、看護師さんは手際良く私のズボンと下着を脱がした。
「痛いですよー。息をふーっと吐き続けてくださいね」
訳もわからず指示に従う。看護師さんの手のひらが、下腹部を押し込んだ。同時に悪露がどぱっと出る。
この瞬間が痛みの最大風速だった。
後陣痛で荒れ狂う子宮。切腹したての腹。力強く押す看護師さんの手。
拷問では?
焼きごてを押し付けられたかの如く熱く刺さる痛みに、二度と出産したくない、と涙を流した。

それから数時間経ち、待望の痛み止めを入れてもらえた。翌日の昼頃には普段の生理痛くらいまで落ち着いた。
思考に余裕ができると、帝王切開でこれなら、自然分娩は人類には無理では、と思い至った。本陣痛は何倍も痛いらしいし時間も長い。股が裂ける人もいるし、そうならないよう切ることもある。
キャンセルできないから最後まで出産するしかないだけ。
ネットのどこかで見た文言だが、正しくそうであるようにしか思えない。

痛みを緩和するためのハードルが、ここまで高いのがそもそも不思議

2人目の子どもを考えたとき、もう一度、拷問を受けたいとは思えなかった。
痛くない出産や、通える範囲の産院について調べた。
例えば、背骨に点滴みたいに刺して、痛いと感じたら自分で麻酔を流せるものがあるらしい。後陣痛への対応ばっちり。これは1人目の前に知りたかった。ただ、対応している産院は驚くほど少ない。しかも、お値段が高い。そういう、痛くない人道的な出産ができるところは費用がネックと知った。私の住む地域の話だが、30万円は高くなる。
出せない金額ではないが、これだけあれば色々できる。それに死ぬほど痛いのはせいぜい1日。ならば我慢して安く抑えるのが良いように感じる。
でも待ってほしい、痛みを取る、緩和するためのハードルがここまで高いのがそもそも不可思議なのだ。痛みによるショック死はないとされているものの、拷問レベルの苦痛をただ我慢するしかないのか。
一説によると、手足の切断より痛くないけど、骨折より痛いとされる出産。手術をするとき、麻酔をかける。そんな当たり前の感覚を出産にも取り入れていい。高度な文明を持つなら可能に思えるが、いかがだろうか。