周りよりお金を使わなかった人だったのに、恋愛で変わった
「玲って何にお金使っているの?」
高校生の時、比較的仲が良かったクラスメイトに言われた言葉だ。
一緒にショッピングに行ったり、カラオケに行ったり。
テスト前に教室に残って勉強するという口実で、お菓子を買い込んでガールズトークに勤しんだり。
グループでもサシでも遊んでいた。
私のことをわりと理解していると思っていた彼女から言われた言葉は衝撃だった。
……でも確かに。
あの頃、みんなが持っていたウォークマンやCDといった音楽関係や漫画の類を、私は一切持っていなかった。
学校に持って行くお弁当も水筒も家から持参していた。
そのくせアルバイトは高校1年生の時から、予定がなければ一日がっつり土日両方やっていた。
そう、私はアルバイトに精を出すわりには、人よりお金を使わない子どもだった。
そんな私が変わったのは、本格的に恋愛をしてからだった。
彼氏に会う前は、何時間もお風呂に入り、6種類ほどのありとあらゆる石鹸で身体を洗っていた。
自分好みの女の子らしい洋服に加えて、男の子ウケするファッションを好きな人が変わる度に買った。
黒がいいと言われれば、白か黒かだったら絶対白派だったのに、黒い服ばかり着た。
また別の彼にシャツがいいと言われれば、一枚も持っていなかったのに、クローゼットのハンガーはシャツだらけになった。
鋭い女の子からは、「男変わったでしょ?」と指摘されるぐらいわかりやすく相手の好みに合わせた。
異常なくらいに周りにお金を注ぐことが、最高に楽しかった
イベント事は散財し放題だった。
記念日、ハロウィン、バレンタイン、ホワイトデー(ホワイトデーもお菓子を2種類作って渡していた。今でもこの文化は変わらない)。
特にクリスマスはディナーにプレゼント、ホテル代と一晩で7万円飛んだこともある。
相手のバースデーを祝うのに旅行をして、広島や海外で誕生日を迎えてもらったこともあった。
ちょっと異常なくらい私は恋愛にお金を注いでいた。
でもそれが最高に楽しかった。
幸いダメンズにひっかからなかったからヒモ化されたりはせず、尽くしたら尽くした以上が私に返ってきた。
それは恋愛に留まらず、友人や家族、お世話になった先輩に対してもそうだった。
結婚が決まり、福岡に帰ってしまうチーズケーキ好きの先輩に、どうしても食べて欲しくて、自分史上一番好きなチーズケーキを会社の人分買いに行ったり。
母親の誕生日にプレゼントとは別に広尾の3万円のコースを予約したり。
誰かを愛すると私の経済は回り始める。人にお金を使うことの喜びを知ったのだ。
それは自分に投資することと全く別のベクトルの幸せだった。
お金を使うと幸せが鎖のように。仕事もがんばり優しくなれる
こう書くとちょっと浅はかに聞こえるかもしれない。
でもお金を使い始めたことをきっかけに、違う幸せが鎖のように繋がってもたらされていった。
お金を使うことが楽しいということは、お金を稼ぐことも楽しくなる。
仕事が頑張れた。
肌や髪が綺麗になれば自信に繋がる。
それで気分が良くなれば、知らない誰かにも優しくなれた。
愛が人に与える変化は決していいことばかりじゃない。
他の人のものが欲しくなったり。
自分を卑下したり。
愛情が激情となって理不尽に相手に向いてしまう場合も。
醜い感情や行動を伴う場合だってある。
世間には愛しかたを間違えて、殺人に発展したり虐待したりするケースもある。
お金の使い方だって一歩間違えれば簡単に悪い方向へ翻る。
自分のことなど制御できなくなるくらい溺れたり、酔ったりするのも愛の姿なのかもしれないけれど。
醜くなるのも悪いことするのも簡単だから。
なるべく美しい感情と行動に変換して人を愛したい。