バレンタインに思い出すのは、SNSに私の話題を載せない恋人

新年を迎えて慌ただしい中、割と最初の方に来るイベント、バレンタイン。お店では大量のチョコレートやかわいいラッピングの袋などが姿を見せ始める。鮮やかに彩られたそのコーナーは、見ているだけで何だかワクワクするし、乙女心がくすぐられる。
好きな人に想いを伝える本命チョコや、友達と友情を交換し合う友チョコ、さらにはあまり付き合いの深くない会社の人などにあげる、義理チョコなどなど、あげるチョコレートの名目は様々だ。

私は、実を言うと今まであまりバレンタインの日を重要視してこなかった。
もちろん忘れていたわけではないし、あげる相手がいなかったわけでもない。
しかしこんな私にも、特に印象に残っているバレンタインの思い出(と言って良いのか分からないけれど)がある。

私が夫とまだ彼氏彼女の関係だった頃――今から約三年前のことだ。
夫はほとんど妻の私のことを自らのSNSに載せない。仕事が忙しく、元々あまりSNSをする方ではないのだが、これは昔からそうで大した理由はないのだという。それに対して私は、夫のことをSNSで頻繁に話題に出す。
この差について別に不満があるわけではないが、ちょっぴり寂しいな、なんて思ったりもしていた。

プレゼントとともにアップされたメッセージが微笑ましい

しかしそんな夫でも、たまに私のことを載せたりする。ただそれは顔写真とかではなくて、もらったプレゼントや私が描いて贈った絵の写真だ。

ある日、夫のSNSを見てみると、私がバレンタインの日に贈ったプレゼントの写真が載っていた。
カラフルなリボンでラッピングされたチョコレートの箱と、キーケースと手紙の写真だった。『愛しの女性からバレンタインにもらいました』と一文が添えられている。夫はほぼ毎日車に乗るし、当時一緒に住んでいた家は差し込むタイプの鍵だったので、一つにまとめられるようにキーケースをチョイスした。
夫の大好きな黒色で、右下に小さく名前も入れてある。相当気に入ったらしく、今でも愛用してくれている。

この写真を見た時、何だか少し微笑ましくなった。夫は日常生活の中でも、愛情表現をしてくれたり感謝の気持ちを伝えてくれたりする方だが、ふと見たSNSでの瞬間も、私の心を揺り動かした。
その年のホワイトデーには、お返しに少しお高いチョコレートをくれた。

悪阻で寝込んでいた年のチョコはユーモアと共に

それから次の年のバレンタインの日がまたやってきた。
当時私は妊娠中で、悪阻で寝込んでいたのでネットでチョコレートを注文した。
今回は少し面白い感じにしようと、おっぱいチョコレートというものを買ってみた。その名の通りおっぱいの形をした少し小さめの、いかにも男性が好きそうなチョコレートだ。
渡してみると、良い反応をもらえた。翌日夫のSNSを見てみると、『つわりでしんどいのにユーモアを忘れない妻です』という一文と共にチョコレートの写真が載っていた。

私はまたしても微笑ましい気持ちになった(ただそのチョコレートは甘すぎたのか夫の口にはあまり合わなかったようで、残りは私が食べることになったのだけれど……)。ちなみにその年のホワイトデーも少しお高いチョコレートをお返しにもらった。

これからも、バレンタインは毎年繰り返しやってくる。
次はどんなチョコレートをあげようかなと考えている時間はきっと世界で一番夫のことを考えている時間だ。
これからも、一年に一度の愛を伝えるイベントを大事にしていきたいと思う。