1人で生きていくしかないと思っていた私を、彼が変えていく
4年前、私は自分に自信のない地味な高校生だった。
3年生ではクラスの8割が男子だったにも関わらず、男子とほとんど会話をすることなく卒業してしまった。恋愛に興味はあったものの、人に頼ることが苦手な私は、大人になっても1人で生きていくしかないと意気込んでいた。
大学に入学した私は、友達と一緒にサークル新歓飲み会に行った。そこで話しかけてきた3つ上の先輩。古着をお洒落に着こなしていて、下駄のからんころんという足音が印象的だった。その先輩と仲良くなりたくて、そのままそのサークルに入部した。
しかし、その先輩に近づくほどの行動力は私にはなかった。憧れの先輩を「推し」と呼ぶことで自分を守っていた。
ある日、飲み会中に別の席にいた推しが私の隣の席に座り、こっそりと話しかけてきた。
「君の友達のこと、好きになっちゃったんだけど、いろいろ教えてくれない?」
推しに話しかけられた嬉しさと、自分が見向きもされていなかったことへの悲しさで気持ちがぐちゃぐちゃになり、帰りの電車でちょっと泣いた。
だが意外なことに、恋愛相談と称してご飯に何度か行くうちに、いつのまにか距離が縮まっていた。それから1か月後くらい、推しが私の恋人になった。
付き合ってから、彼は私のことをとても愛してくれた。彼は私に「可愛い」とたくさん言った。私が「可愛くないよ」と否定しても、「ううん、可愛い」と必ず反論した。
はじめは自分のことをとても可愛いとは思えなかったけど、彼氏の前では短いスカートや少し派手なブラウスを着るようになった。
メイクも変わった。私が憧れていたデパコスを、彼がたくさんプレゼントしてくれた。「可愛い」という言葉を彼から引き出すため、可愛くなる努力をたくさんした。
甘え方も学んだ。ラブホテルにチェックインしてすぐ、彼は煙草を吸っていた。たしか、モヒートのダブル。彼が煙草の火を消したと同時に私は彼にキスをした。彼は「臭いからやめな」と笑っていたけど、嬉しそうだった。
非喫煙者の私を気遣って、普段積極的な彼が、煙草の後は遠慮がちになるのがたまらなく好きだった。高校生の私がこの姿を見たらきっと驚くだろう。
人を愛することで、1人で生きていくほうが難しいと知ってしまった
私は1つ、彼に不満があった。それは、彼に女友達が多くいること。ふたりきりでは遊びに行かないものの、毎週いろんな飲み会に参加していたのが、私は気に食わなかった。
高校生の私は、女友達に嫉妬する今の私を見て「情けない」と呟いていた。過去の自分に羨ましがられるような生き方をしたいと思い、付き合って2年半後に別れを告げた。
しかし、あの人に愛された2年半のせいで、人を愛する甘さを知ってしまった。見た目は1人前の女性になったはずなのに、中身はすっかり寂しがりの子どもだ。だからまた恋人を作り、今でもあの人に教わった甘えを利用している。
高校生の私に伝えたい。誰かと生きることより、1人で生きていくことのほうがよっぽど難しいと。いつか、男性に甘えなくても生きていける、1人前の女性になれるだろうか。