三色そぼろ丼にハッシュドビーフ、鶏もも肉の照り焼き、かぼちゃの煮物、ネギチヂミ、豚の生姜焼き、オムライス、揚げ出し豆腐、それからフレンチトーストにホールサイズのミルクレープ、ココアマフィン。
ここに書き出したものは、私がここ1年弱の間に“初めて”作った料理たち。
他にもじゃがいもの甘辛炒めや手羽元のグリルとか、ここに書ききれないくらい色んな料理に挑戦してきた。
その理由は、交際している彼と2人で食事をとる機会が増えたから。
2021年の7月から、友人の紹介で付き合い始めた私たち。
付き合いたての頃は一緒に居酒屋に行ったり、焼肉を食べたり、ラーメンをすすったり。
2人ともお酒を飲むのが好きだから、「色んなお店を2人で開拓したいね」と行きたいお店をブックマークしては次の開拓先を楽しく探していた。
しかし、それから程なくして国から緊急事態宣言が発令され、気軽に外出や外食が難しい世の中に変わってしまった。それ以降はお互いの自宅で一緒に映画を観たり、ボードゲームをしたり“お家デート”が私たちの定番になった。
そして、付き合い始めて約1か月後、仕事終わりに彼が私の家にやってきて一緒に夜ご飯を食べようということで、初めて彼に手料理をふるまう機会がやってきた……!
実家暮らしのころ、台所に立つことを許されなかった私が作ったもの
当時一人暮らし1年生だった私はこれまで、料理を教わる機会がほとんどなかった。
理解しがたいかもしれないけど、母が心配性で過保護な面を持っていたから、包丁を持つことや台所に立つことをなかなか許してくれなかったというのが大きな理由かもしれない。
料理経験がほぼ皆無だった私は、一人暮らしを始めてからは、
「お肉焼いたら油がたくさん飛んで手入れが大変だし、ワンルームだからきっと臭いもついちゃうだろうし、私が食べるんだから何でもいいよね!油そんなに使わないからヘルシーだし!」
と言い聞かせて、料理初心者でもできる野菜炒めや、蒸すだけの鶏肉料理など簡単に調理ができるものばかり作っていた。確かにヘルシーでダイエットにはよかった気がする。
そんな私が初めて彼にふるまった料理は三色そぼろ丼と、揚げ茄子のおひたし。
料理初心者の私でも簡単に作れそうなメニューを検索しまくった結果、これに行きついた。
彼が帰ってくる1時間ほど前に炊飯器をセットして、その間にレシピサイトを見ながら卵そぼろを作って、上に乗せる小松菜に味付けをしてっと……。どたばたしながらやっとこさ2つの料理が完成した。ふー、間に合った。
「もぴちゃんの初めての手料理楽しみ!」と仕事終わりの彼が帰宅した。
緊張しながら彼にそぼろ丼たちを出した。そぼろ丼をもぐもぐ食べる彼。
どきどき、どきどき……。
「うん、美味しい!ありがとう」と笑って完食してくれた。良かった……。
食後に「俺ね、茄子あんまり得意じゃなかったけど、もぴちゃんのは食べられたよ」と言ってくれ、初めて好きな人から美味しい、と言ってもらえることの嬉しさを感じた。
料理上手な彼と手料理をふるまいあう日々が楽しくて
それからは彼と一緒に夜ご飯を食べる日は、冷蔵庫にあるもの(例えば「卵 キャベツ レシピ」)でレシピ検索をしたり、鮭が安く手に入ったからそれをフライパンで焼いてみたりどんどん色んな料理に挑戦した。
ちなみに彼は一人暮らし歴が長く、かつ実家でも料理やお菓子を作っていたため私より知識も経験も豊富だ。だからいつも魚の焼き加減を教えてくれたり、私の様子をちらり、と伺いに来てくれたり、なんだか心強い。
彼の自宅に遊びに行ったときは彼が豚バラを使った料理をふるまってくれて、初めて食べた彼の手料理もすごく美味しかった。
そして、クリスマスには初めてミルクレープを焼いた。
生地を混ぜ、薄く伸ばしたそれを30枚ほど焼く。焼きあがった薄い生地の間に生クリームを塗って、という作業を30枚分続けた。
かかった時間は約2時間。30枚も生地を作ったのに出来上がりは思った以上にぺしゃんこで、ブルーベリーと生クリームで飾り付けをしてなんとか形にした。
2人でクリスマスイブに食べたミルクレープは少し粉っぽくて、ミルクレープなのにずっしりしていて、あんまりおいしくはなかった(笑)。
だけど、彼はいつものように嬉しそうに「ありがとう、嬉しいよ」と何度も笑ってくれて、来年こそはもっと美味しく作れるようになりたいと思った。でも初めてのケーキ作りはすごく楽しかった。
今年のバレンタインには妹と一緒にマフィンを作った。
そのマフィンたちもいつものように「美味しいよ、すごく嬉しい」と、幸せそうに食べてくれた。彼はいつも私の作った料理を美味しい、ありがとうと言って完食してくれる。
そして、お返しには彼の手作りのマカロンとお花をもらった。マカロンは売り物みたいに可愛くて、そして味も甘くて美味しくて、彼の凄さをひしひしと感じた。また食べられたらいいなぁ。
彼の好物はピーマンの肉詰め。彼にアドバイスをもらいながら初挑戦
そして最近は、彼が好物だと言っていたピーマンの肉詰めに初挑戦した。
レシピサイトを開きながら、ひき肉に卵や調味料を入れてもみもみ、と混ぜ込んでいく。
半分に切ったピーマンの種を取り除き、片栗粉をまぶしていく。手はぐちゃぐちゃだ。
途中で彼が「様子を見に来ました~」と私の後ろから様子をのぞき込んできた。
私を心配してくれる姿に自然と上がってしまう自分の口角を隠しながら、肉だねをピーマンに詰めていく。
サラダ油を引いたフライパンに肉が下になるようにピーマンたちを敷き詰めてっと……。
後は焼き色を確認出来たら水を入れて蒸し焼きにするのね、ふむふむなるほど。
彼に「この焼き加減どう思う?」とアドバイスもちょくちょくもらいながら、ソースも手作りにして、ピーマンの肉詰めが完成した。
「いただきます」
「いただきます」
ぱくり、と一口。あ、美味しい!!
ピーマンの肉詰めは料理初心者の私にとって難しいイメージを持っていたけど、それが私にも作れた。ちゃんと美味しいピーマンの肉詰めだ。
目の前の彼を見ると、彼も美味しそうにぱくり、ぱくり、と食べている。
あっという間に平らげた彼は「ごちそうさまでした、今日も美味しかったよ、ありがとう」と笑った。
そして、いつものように彼は二人分の食器たちや私が使ったフライパンを洗うために席を立った。
「いつもお皿洗ってくれて、ありがとうね」
「ううん、こちらこそいつも美味しいご飯作ってくれてありがとう」
自然と言葉にできるのは、料理も片付けもやって当たり前じゃないから
彼と付き合い始めてから、料理を作るのがどんどん楽しくなったし、色んな気づきがあった。
お肉は手軽でヘルシーだから電子レンジで調理するのもいいけど、やっぱりフライパンで油をひいてこんがり焼いた方が美味しいこと(油なんて後で掃除すれば大丈夫!)。
彼からの「美味しい」が私の料理を作る原動力になっていること。
料理を作ること、お皿を洗うことがお互いに当たり前じゃないと思っているから「ありがとう」が自然と出てくること。
彼はいつも「ありがとう」の言葉を欠かさない人だ。そんな素敵な彼だから、私もどんどん色んな料理に挑戦して彼と一緒に食べたいと思う。彼のおかげで、料理の楽しさを私は知ることができた。
近い将来、彼と住んだら一緒にわいわい楽しく色んな料理を作りたい。きっとこれからも彼となら外での食事も家での食事もきっと楽しいものになるだろう。
まだまだ料理初心者の私だけど、これからもいろんな料理に挑戦してみたい!
さて今日はどんな料理を作ろう。彼が帰ってくるまであと30分。レシピサイトを眺めながら私は家路につく。