5歳の私。女の子と言えば、かわいいピンク。プリキュアの最推しはいつもリーダー格のピンクの子。髪ゴムはピンクラメがついた星の飾りがお気に入りだった。幼稚園の卒園アルバムにも、好きな色はピンクと堂々と書いてある。

19歳の私。嫌いな色と言えばピンク。恋愛の色として過剰な女の子らしさを演出する色。そもそもピンクって名前が、どことなく軽薄でいけ好かない。
成長するとともに、私の好みはピンクから離れ、寒色系→無彩色→暖色系と目まぐるしく変化した。19歳現在では山吹色と深緑が好きだ。

そして20歳を目前にした本日は、成人式の振袖を選びにやってきた。時期が遅めとはいえ、まだまだ多くの中から選ぶことができるようだ。
母よりも年上に見える店員さんは、お昼時に押し掛けた私に嫌な顔ひとつしなかった。それどころか、まずは1つに決めなくてもいいから気になる色や柄のものを選んでねと言ってくれる。
振袖という色の洪水を目前にした私は、いつものように、つまり無意識のうちに選択肢からピンクを排除した。

後悔しないように成人式の着物を選ぶ。ピンクは断固阻止したい

友人に勧められていた深緑と、自分の目についた群青色と朱色の振袖を鏡の前で合わせてみる。店員さんも太鼓判をおしてくれた、明るくも上品な朱色に決める。
帯や帯留めもサクサク決まる。私は悩みすぎると最後にすべてが面倒くさくなってどうでもよくなってしまうので、成人式の着物は後悔しないように、でも早く選ぼうと決めていた。投げ出した結果、とちくるって似合いもしないピンクにチャレンジするようなことは断固阻止せねばならない。

ここまでの選択を通じて、私は朱色の振袖にペールオレンジの帯、ピスタチオカラーの帯留めで仕上がっていた。イメージするといまいちな感じもするが、鏡で見るとなかなか統一感があっておしゃれなのである。納得の出来栄えであったが、まだこれで完成ではなかった。
最後を飾るのは帯揚げ。これは帯と振袖の間に挟む布のことだそうで、私は今日までその存在を知らなかった。
柄はなく、単色の中から選ぶ。暖色系の振袖と帯に、やわらかい寒色系の帯留めがメリハリをつけている。ここに足す最後の一色はなかなか難しい。それまではいくつかの選択肢を即座に提示してくれたベテラン店員さんも、今回に限ってはどれが似合うのかしらと悩んでいる様子だった。

時間を要した帯揚げ選び。意を決した店員さんが提案してくれた色は

店員さんが思案した結果、最初に出てきたのは黄色だった。鮮やかな黄色と少し落ち着いた色味の山吹色も出てきたのだが、少し目立ちすぎてしまうかもしれない。山吹色自体はお気に入りなのに、ほかの色と合わせるとそうでもなくなってしまう。暖色同士だと同化してしまうのかな、とわずかに勉強した色彩検定の記憶を掘り起こした。
続いての登場は黄緑だった。帯留めとの統一感が出るかと思ったのだが、むしろ逆だった。
ピスタチオカラーと黄緑色では明度がしっくりこない。明度の差とはいわゆる陰キャと陽キャの違いのようなものかもしれないと、どうでもいいことを考えたりした。
そして3番目が登場するまでには、さらに時間を要した。意を決したような店員さんが提案してくれたのは、なんとピンクの帯揚げだった。

振袖を選ぶ時点で、嫌いな色はピンクだと伝えていたにもかかわらず、最後の最後でピンク。私の怪訝な表情に気付いた店員さんだったが、とりあえずつけてみましょうと言うが早いか、手際よくピンクの帯揚げを着付けてくれた。
鏡を見てみると、案外悪くなかった。それどころか色がフィットした感さえある。いささか悔しい気もしたが、山吹色の例のように好きな色でも合うとは限らないのだから、逆に嫌いな色でも合うことはあるのだろうと自分を納得させた。
そうせざるを得ないほどに、ピンクが似合っていたのである。

選んだのはサーモンピンク。当日の気持ちが楽しみだ

ピンクはピンクでも、帯揚げの色はサーモンピンクだった。オレンジにも近く、元気なイメージがある一方で子供っぽさはない。
お客様が苦手なのは紫に近いような派手なピンクでしょう、と出会って1時間程度で私の好みを熟知した店員さんが言う。

確かにそうかもしれない。私はピンクという大まかな分類だけで色を嫌っていたのかもしれないと改めて思った。
黄色というカテゴリーの中で山吹色が好きなように、ピンクの中にも好きな色を見つけられるのかもしれない。そう思うと、ピンクに対する嫌悪感が消えていく心地がした。
もちろん帯揚げにはサーモンピンクを選び、振袖カスタマイズは無事終了した。

20歳の私は、どんな気持ちで今日選んだ振袖を着るのだろうか。サーモンピンクの帯揚げ、その時にも気に入っているといいな。
そんなことを思う19歳の春でした。