「ピンク、好きなんだ」
小学生の時、男子からこのフレーズを聞いたときには、「男の子なのに?」と思っていたが、大人になった今この言葉を聞くと、すごく良いなって思う。
「男子は青」という世間の凝り固まった固定観念から解かれている感じがするからだ。
青は男、赤は女。この考えになってしまう根底には一体何が関係しているんだろう。そう考えてみると、ただトイレの標識が青と赤だった、とかそんなことくらいしか理由なんてないのかもしれない。
でも私は随分と長い間、この考え方に捉われることになる。
ピンクが好きなのに。優先したのはピンク色持つイメージ
私は小さい頃、ピンクが大好きな女の子だった。スニーカーもピンク、スカートもトップスもみんなピンクの日もあった。
ピンクを着ると、当時見ていたアニメの主人公に近くなったような気がしたし、無敵になれる色=ピンクだった。ピンクを身につけていると、好きな人にもガンガン話しかけにいけたし、とにかく笑顔が弾けていた。
ピンクとは関係ないが、卒園の時先生からのメッセージに「からだじゅうにリボンやおはなをくっつけてあそんでいましたね」と書かれるくらいのメルヘン野郎だった。
それがいつしか「ピンク着てるやつってぶりっ子だよね」とか、周りの雑音が気になるようになった。同調しないとやっていけないような気がして、それから私はひっそりと影に隠れるように、紺や黒などの色を着るようになった。
当時の小学校・女社会で上手くやっていくためには、「女らしくないこと」が安全だったのだ。そうして自分の心の声に少しずつ疎くなっていった。
ピンクは自分の気持ちを上げたいときのお守りカラー
それからしばらく、好きな色でピンクと答えることはできなかった。そんな私が変わったのは、「周りの人は自分のことを思ったほど気にしていない」と気づいた時だった。
というより自分の好きなモノに蓋をして、偽っている状態に限界を感じたのかもしれない。その時のときめきだったり、自分の心に従う方がもっとずっと大切なんだと感じたのだ。
そう思って、初めて取り入れたのはピンクのカゴバッグだった。
シンガポールで手作りされたというそれは、夏を待ち遠しく感じるフラミンゴみたいなピンクと、メロンみたいなグリーンで構成されている。派手なくらいが可愛いだろ、とだいぶ思い切って買ったモノだった。
夏の期間の休みの日は、たくさん使った。自然と歩くときの腕の振りが大きくなるし、視界に入ると元気のお裾分けをしてくれる。今は部屋の中で物入れとして活躍してくれているけど、元気を与えてくれるものには変わりない。
今は自分の気持ちを上げたい時のお守りカラーとして、ピンクを使うようにしている。
折り畳み傘はビビットなピンクで、じめっとした空気を跳ね除ける。気合を入れるメイクの時はピンクのアイシャドウ。楽しい夢を見たいときのピンクパジャマ。顔色をよくしたい時のピンクマスク。
そうすると不思議なもので、足取りが軽やかになった。ピンクを身に付けたいときに身に付けると、優しい気持ちや幸せな気持ちが増幅して、自然と笑みが溢れる。私にとってピンクはそんな色だ。
ピンクに関わらず、その時ときめく色を身に付けたい。それは年を重ねてもだ。好きなことを好きって言える人は強くて素敵な人だなと思う。そしてそんな人の方が自分の好きに正直で、人の気持ちにも敏感に寄り添えるのではないかなと思う。
自分のご機嫌を取るためにピンクの力を借りて、今日も頑張っている。