私は淡い色が好きだ。水色、黄緑、薄黄色、そしてピンク。ふわっとした優しい感じの色を好む私は、絵を描くときも身につけるものも淡い色のものが多い。今こうしてエッセイを書いているパソコンの色も、淡いピンクである。
服を買うときも淡い色の服を選びがちで、自分でも割と似合っていると感じている。
でも、アラサーになってからピンクの服を試着して、気に入って買ってきて母に見せたとき、ぽつりとこんなことを言われた。
「もういい歳なんだから、そういう色の服は厳しいんじゃない?」
厳しい?ピンク色の服を着ることが?
ドキッとした。自分はかわいいと思い試着し買ってきたものの、周りから見たら厳しいと見られてしまうの?
その言葉を聞いてから、ピンクの服はこっそり洋服棚に仕舞い込んでしまった。
思い返してみると、一緒にモデルとして撮影会に参加しているメンバーも身だしなみには注意を払っていて、メンバーが着る服や髪型を気にすることがあった。
「若くないのに髪、横結びなんて……」
「わ、あの子もうアラサーなのにピンクのワンピだよ。恥ずかしくないのかな?」
悪気があって言っているわけではないのはわかる。撮影会は仕事だ。相手に失礼がないように接したり振る舞ったりする必要がある。
でも、何か引っかかる。
自分が良いと考えた髪型や衣装は失礼に当たるのか。アラサーである私も実際ピンクの服を好んで買ってきた一人だ。
え……それなら私は恥ずかしい人ってこと?
アラサーにもなってピンクの服を着ることは、社会的に恥ずかしかったり厳しかったりするの?
ピンクの服って、若くないと着れないって事なの?
こうして実際にピンクを拒絶されてしまうと、なんだかピンクの服を自信を持って買ってきた私が間違っていたのかと不安になる。
何歳になってもピンクが好き。好きなものは好きと言いたい
そんな中、29歳の誕生日前、お気に入りのピンクの振袖に手を通した。
地元の小さな撮影会で数人のカメラマンさんを前に私は舞う。少し不安はあったもののお気に入りの振袖を久々に着る機会ができて、ワクワクした。
若い女の子には多くのカメラマンさんたちが集まった。撮影会には不慣れでも、やはり肌がピチピチで初々しい姿は魅力があった。そんな中、私のピンクの振袖姿を撮るカメラマンさんは少人数。でも、私の良さを知ってくれているベテランさん。私の良さをより一層引き出してくれる。
「わかちゃん、今日もいいねぇ」
「そんなポーズするなら撮らんわけにはいかんやろ」
「その振袖、桜にあってるねぇ」
私の姿を撮ってくれるカメラマンさんは、ピンクの振袖を着た私を肯定してくれる。だから私は自信を持ってピンクの振袖を選ぶ事ができたんだと感じた。
私はきっと自分だけではピンクの振袖を大切に使い続けることができなかった。でも、私のピンクで身にまとう姿を嬉しそうに写真におさめてくれる姿に支えられている。
あぁ、私は、自分の意思だけでなく周りからもピンクを好きでいさせてくれる環境があるんだと気付かされる。
ありがとう。
周りに流されかけて、自分の好きを誤魔化してきた事があった。実際ピンクはきつい年齢かもと思った。ピンクは幼い。この年齢でピンクなんて恥ずかしい。もう、ピンクを手放していかないといけない年齢だと頭をよぎった。
でも、まだいける。きっと好きを大事にするのに年齢は関係ないんだ。
私はピンクの服が好きだ。それの何が恥ずかしいの?
私はピンクの服を着ることが恥ずかしいなんて思っていない。
だから私はピンクのそばに今日もいる。ピンクのチークにピンクの口紅、私のお気に入り。好きなものを好きというのは、周りの目を気にすると難しいこともあるかもしれない。
でも、私は好きなものを好きって言っていきたい。そんな勇気を持ち続けたい。
だから今年の夏もピンクの花柄のスカートを身にまとい、胸を張って外を歩きたい。