10年経って自分の意思で私はピンクと復縁した。ピンク色を久しぶりに纏った時、大人になったと感じた。

私がピンクを選ぶのは、いつも誰かと比較したときだけだった

幼い頃、持ち物はピンクだらけだった。親が「兄は青で私はピンク」と決めつけていたことが理由で、服も鞄も筆箱も自然とピンクのものばかりだった。ピンクのものに囲まれていることに対して、当時は特に関心もなく、むしろ可愛いねと言ってもらえることは嬉しかった。

小学校6年生の冬、転機が訪れた。いつも一緒にいた友人が新しい桜色の冬コートを着てきた。少し丈が短く、丸襟。襟には薄ピンクのファーがついていた。そのコートを着た友人は天使のように可愛かった。
その一方であることを悟ってしまった。
「私よりもピンクが似合う子がいる。可愛い子が使う色であって、私が身につけて良い色じゃない」
すでに大人びたキャラが定着しつつあった私は、次第に白黒やブルーのものを選ぶようになった。

それからはピンク色のものを自ら選ぶことは無くなった。私がピンクのものを使うのは、いつも誰かと比較したときだけだった。
弟と一緒にスマホを買いに行った時も、同じ色だと間違えるからという理由で、弟はシルバー、私はピンクゴールドになった。サークルの卒業の時もらった花束は、他のメンバーでピンクっぽい人がいなかったから私がピンクの花束を渡された。アルバイトの卒業の時もらった花束は、他にピンクが似合う同期がいたため、私は他の同期と被らないホワイトの花束だった。
いつだって、私は誰かと比較され、ピンクが似合う人がいないときだけピンクと接していた。

自分の色を見つけたい。パーソナルカラー診断を受けてみることに

そうして社会人になった。大学を卒業して半年後、久しぶりに会った大学の友人は雰囲気が変わっていた。可愛らしいピンクメイクをしていた。
思わず「可愛い!めっちゃ似合うね」と彼女に伝えた。
「実はね、パーソナルカラー診断に行ったんだ!そうしたら淡いピンクが似合うって言われて、メイクを変えてみたの」
元々ふわふわした穏やかな女の子だったので、淡いピンクのメイクが似合わないわけがなかった。
「なっちゃんもパーソナルカラー診断行ってみたら?」
この言葉がピンクと私の距離に変化をくれた。

よく考えてみると、当時私は自分に似合わない色を決めつけて、それ以外の色をなんとなくで選択してきた。メイクだって無難にブラウンメイク。自分の色を見つけたい。そう思うと、すぐにパーソナルカラー診断の予約サイトを探し始めた。

友人に勧められたお店へ予約し診断を受けた。結果はブルベ冬。元々色白な私にはわかりきった結果だった。診断に加え、フルメイクをしてくれるコースを予約していたため、診断後メイクもしてもらうこととなった。その時だった。
担当の方から「普段はどんなメイクをされてるんですか?」と聞かれたので、「無難にブラウンメイクですね。ピンクとか可愛らしい色は似合わないんで」と自虐気味に答えた。
「確かにとっても落ち着いた大人びた雰囲気ですもんね」
ですよね……。わかりきった返答に一瞬落ち込んだ。しかし、担当の方が付け加えた。
「淡いピンクは似合わないかもしれませんが、深い落ち着いたピンクやブラウンピンクはとってもお似合いですよ。ピンクメイク試してみませんか」
「本当ですか!?お願いします!」
咄嗟にお願いしてしまった。

鏡に映る自分は、久しぶりに女の子の顔をしていた

「完成ですよ。とってもお似合いです」
目の前の大きな鏡で自分を見た。そこにはいつもと違う自分がいた。
友人のピンクメイクとは違い、少し深いピンクのアイシャドウに、ピンクブラウンのマスカラとアイライン。濃すぎることもなく、大人可愛いメイクに仕上がっていた。
鏡に映る自分はキラキラとときめいていた。久しぶりに女の子の顔をしていた。

思春期の間、ピンクは私に劣等感を与えていた。私よりピンクが似合う人を見つけては落ち込み、ピンクは似合わないからと避け続けていた。今思うと、心の奥ではピンクが似合う人になりたかったのに、自らピンクを遠ざけていた。

しかし、10年経って、ピンク色が私に自信をつけてくれた。私の良さを引き出してくれた。
今では、メイクだけでなく、服や鞄など日常的に使うものにもピンクを少しずつ取り入れるようになった。誰かと比較してではなく、自分の意志で。