最近、カバンの中身がいっぱいになりやすい。お弁当や水筒を入れたら、それ以上ものを入れられない。どうしてだろうか。1個ずつカバンの中身を取り出す。
「あ、犯人はあなたね!」
化粧用ポーチが、いつの間にかいっぱいになっていた。

ずっしりとした重さ。化粧品がほんの少しの隙間もなく、パンパンに詰め込まれている。そしてファスナーが閉まっていない。
なんとなくポーチを見ていたら、口にマスカラや眉ペンシルが刺さり、助けて助けてと苦しそうだったため、急いで2本とも引っこ抜いた。思えば、いつの間に化粧品が増えたのだろうか。

続々と加わっていった化粧品。顔は以前よりほんの少し重くなった

2年ほど前の私は、予定がなければほとんどすっぴんに日焼け止めで過ごしていた。外出時はおしろいにアイブロウ、アイシャドウ、チーク、リップのみ付けていた。
しかし今では、それらの化粧品に新しい仲間が続々と加わっている。ハイライトにマスカラ、アイライナー、まつげ美容液、ビューラー。そしてファンデーションは3種持ち、アイシャドウも多色パレットを買い直した。チークはクリームチークも買い足し。眉ペンシルは眉マスカラと兼用である。
厄介なのはリップの数。いつも持ち歩いているのは、色つきリップクリームを合わせて5本。リップティントやグロス、マットな口紅と幅広く揃っている。
思えば、過去の私よりほんの少し顔が重くなったような気がしている。

どうして私は知らず知らずの間に化粧品を買い足していたのだろうか。シンプルな化粧から凝った化粧になっていったのだろうか。
メイク動画の真似事をしたかったから?SNSでトレンドのメイクに挑戦したかったから?多分、どちらとも違う。
恐らく理由は、そんなポジティブなものではない。どちらかと言えばネガティブなものである。

聞こえてくる容姿批評。完璧な顔を目指し化粧品を塗りたくった

SNSではよく、顔の流行について言及されている。
「中顔面の長さ問題」「涙袋問題」「Eライン問題」「小顔問題」。私はそれらのトレンドを見る度に、自分の顔にはどういう欠点があり、またどうカバーしなくてはいけなくなるのか、とても不安になる。
ただでさえ、色んな人がオシャレに興味を持ち、美意識が高まっている。街中で美人だな、可愛いなと思う人も増えてきた。
でも、私はどうなんだろう。醜く思われていないかな、外に出て恥ずかしい容姿をしていないかな。容姿について悩むことが増えてきた。

ほんの1ミリでも黄金比から外れていたら、涙が止まらなかった。そして、学校に行くと、嫌でも男女関係なく容姿批評が聞こえてくる。
当事者になったことは無いが、人の容姿に点数付けする人が周りにいることは事実であるため、ますます、完璧な顔を目指して顔に化粧品を塗りたくった。
「もし、憧れの先生が私の容姿をよく思っていなかったらどうしよう」
「友達が無理してブスな私と付き合ってくれてたらどうしよう」
言われていないことでも真剣に悩んだ。でも、そんな暗い気持ちで追い詰められるように化粧をしていても全く楽しくない。オペラ座の怪人が仮面を着けるように、私は化粧で素顔を隠していた。劣等感と共に化粧用ポーチが膨れ上がっていたのだ。

グループ内に「似ている子」はいない。みんな満点で愛らしかった

先日、とあるアイドルグループに新メンバーが入ったそうだ。写真を見てみたら、一人一人とても可愛くて愛嬌があって、笑みがキラキラと輝いていた。
私は彼女たちは一人一人、顔の系統が違うことに気づいた。小麦色の肌の子もいれば、真っ白の子もいる。目が丸い子も切れ長の子もいる。輪郭が逆三角形の子も丸顔の子も面長の子もいる。鼻が高い子、低い子もいる。でもとにかくみんなとても愛らしく笑顔を咲かせていた。

誰が可愛いかといったランキング付け自体、ナンセンスだと感じた。みんな満点、細かい欠点とかどうでも良かった。そして、誰一人として「この子とこの子は似ているな」と思う子がいないことにも気づいた。
私は彼女たちの多種多様の笑顔を見ているうちに、「みんながみんな化粧で同じような顔になったらつまらないよね」という思いが芽生えてきた。

ここにいる彼女たちは、自分なりに自分の顔を最大限に輝かせている。正解探しに疲れた私は、いっその事彼女らに便乗することに決めた。とても畏れ多いが。
私はメイクでありもしない正解の顔に近づけるんじゃない。自分の顔を最大限活かすメイクをしよう。そう決めた。
そして、手元には多くの化粧品がある。これからは自分のことを好きになれるメイクをしていこう。少し重くなったカバンと化粧用ポーチを持って、今日も学校へ向かう。

冒険は始まったばかり。オンリーワンの顔を最大限に活かしていく

とは言いつつも、美人なレディや可愛いお嬢さんを見て、自分と比較して落ち込むことは多々ある。鏡を見れば嫌でも自分の容姿の欠点と向き合うことになる。でも、私は自分の顔で劣等感や周りの批評と勝負していく。
勝負するには武器が必要だ。化粧用という名の武器はしっかり揃っている。今度は武器の使い方だ。
それでは、私にはどの系統のメイクがお似合いなのか。今度はただ流行りのメイクという理由だけで決めたくない。メイクのテクニックも磨く必要がある。
私の冒険は始まったばかりだ。元々特別なオンリーワンの顔を最大限に活かしていく。