出産は人間誰しもが関わりを持っていることだ。
私自身も、親が産んでくれなかったら生まれていない。私だけじゃない、今の世の中を生きているほとんどの人間が、母親のお腹の中で育ち、生まれてきている。

生命を産む行為、生々しいけど神秘的、母は凄い……出産に対して、私はそんな感覚を抱いている。それ以上に大きな感情も抱いているが、それについては後述する。
時々、自身がいざ「出産」をするとしたら、とまだ学生の身分ながら考えてしまうのは、街中でまだ何も知らないような目をした小さいいのちを見かけることが多いからだろうか。

大人になったら家庭を、子供を持つことが当たり前と思っていた

昔は無邪気に「おおきくなったら、自分の子どもとペアルックしたい!」などと考えていた。子供ながらに家庭を持ち、子供を持つことは当たり前だと思っていたし、自分自身もそうなるのだと信じて疑わなかった。ただ、幼い頃の私には申し訳ないが、おそらくそれは無理だろう、と思う。

今の、そして今後、私はおそらく出産はできない。
子供の泣き声が苦手、面倒見が良い方ではない、上手く育てられる自信が無い、できれば好きな人と長く2人でいたい……など、理由を挙げてしまうとキリが無い。ただ、その中でもひときわ私の子供を持ちたいという気持ちを妨げている不安がある。
お腹に、自分ではないいのちを宿すことへの恐怖だ。

これは漠然とした恐怖だが、まず自分の体が大きく変形するのが怖い。お腹が大きくなり、その中に赤ちゃんがいる状況。自分の体が自分のものではなくなっていくような、そんな感覚。

お腹の中で動く子を、世の母は愛おしいと思うらしい。私は無理

自身の想像力のせいなのか、元々苦手だったのかは忘れたが、他者の臨月の姿にまで恐怖を感じるほどだ。
お腹は重いんだろうか?普段の生活はどうなる?食の好みは変わるのか?どのくらい気を使って生活しないといけない?悪阻というのはどれだけ大変なのか?それを想像するだけで気分が悪くなってしまい、より一層世の中の母親達への尊敬の念が湧く。
私には、出来ない。自分がそうなったと考えるだけでお腹のあたりがきゅうっと血の気が引く感じがする。

お腹の中に別の生き物がいるということも怖い。
まだ小さいうちは自覚せず、お腹の中の子になにか悪いことをしてしまいそうで怖い。あまり自分の体を大事に出来ている方ではないので、気付いたら流産なんて事になってしまったら、ひとつの命を自分の責任で亡くしてしまったことへの悲しみや恐怖、絶望でおかしくなってしまうだろう。

大きくなったら中で動くのも怖い。中から蹴られるとか、動くとか。
痛くないのだろうか。世の母はそれを愛おしいと思うらしいが、私は果たしてそう思えるのだろうか?正直、無理だと思う。

たぶん出産がいちばん怖い。産む予定もないのにこんなに怖い

色々考えてしまうが、多分、出産がいちばん怖い。生々しい言い方をするが、あの大きさの生き物が骨盤を広げ、股を通って出てくるということがもう怖い。
自分の体が壊れてしまうのではないか?赤ちゃんがうまくそこを通れなかったら?

産む予定もないのにこんなに怖いのだ、いざ直面したら恐怖で失神してしまうかもしれない。
こうして文に起こしているだけで心拍数が上がり、血の気は引いている。私にとってはどこまでも怖いものなのだ、出産というのは。