夜中に通話しながら課題に取り組む、深夜の時間が好きだった

その人と深夜にする通話が好きだった。
「課題終わらないね」と慰め合いながら、深夜テンションで下らない話をして笑い合いながらする深夜の通話、お互い寝ないようにするためだけのものだったけど、私はその時間が本当に好きだった。

夕方頃に、「今日はどうする?」と、どちらからともなく連絡を入れる。通話が始まるのは、だいたい12時から。
お互いエナジードリンクを飲みながら、どうする、ああする、こうする、これはダメだ、あれはムリだ、などとやいのやいの言いながら、時には真面目に話を聞いてアドバイスしたり、適当に「いいんじゃない?」なんて言って「今適当に返したでしょ」と突っ込まれながら。
効率が良かったかどうかは分からないけど、夜中にやっているにしては気が滅入ることが少なかったし、もしそうなったとしてもその人は優しく私の事を受け止めて、慰めて、元気付けてくれる。

あまり元々自信がある方ではない私は、自分の意志で作り上げないといけない課題に弱くて度々心が折れかけていたけど、その人のおかげで何とか持ちこたえていたし、ギリギリの所で提出まで持っていくことが出来た。
いつもその人は私より早く課題を終わらせていたけど、私が終わるまで一緒に起きていてくれた。

そんな時間がなくなって1年、あの頃の通話時間が羨ましい

でも、それは1年くらい前の話。
同じ大学ではあるけど、進む分野が変わってしまったせいなのか、それとも登校が始まってしまったせいなのか、その人のアルバイトが忙しくなってしまったせいなのか。色々要因はあるかもしれないが、今は全く深夜に通話をしていない。
当時からあまり成長していない私は、今でもギリギリまで終わらせられず、深夜にパソコンに向かっている。あちらは今どんな夜を過ごしているのか、私には分からない。ただ、1人の夜を過ごすことが増えただけ。
時々、連絡してみようかな、と考えるけど、迷惑や邪魔になったら嫌だなと当時は考えなかったようなことを考えてアプリを落として、音楽を流しながら作業を始める。

時々課題を早めに終わらせられて早めに布団に潜っても、結局寂しくなってしまって当時のトーク履歴を遡っていたら朝を迎えていた、なんてこともしばしば。
当時の通話時間の長さが羨ましい。今は通話なんて滅多にしなくなってしまった。
そんなに話したいなら本人にそう言えばいいのに、と自分でも思うけれど、その人の負担になりたくないという気持ちが大きくて、結局指先は動かず、SNSで綺麗な写真を眺めて心を落ち着かせたり、今みたいに文で寂しさを吐き出して紛らわせたり。

寂しいというわがままは言えなくて、今日も1人トーク履歴を遡る

その人と通話をするようになる前は、どんな夜を過ごしていたっけ。あまり友人が多い方ではないので多分1人で過ごしていたはずだし、寂しくはなかったはずだ。
でも、今はどんなに集中していても、どんなに好きなことをしていても、イヤホン越しの声が聞こえない夜は寂しいと思ってしまう。でもその寂しさを埋めて欲しいというわがままは性格的に言えなくて、あちらから何か来ないかな、なんて祈ってしまうけど。でも、きっとそんな連絡が来ることは今後無いだろうなと諦めている。
あの人は忙しいから仕方ない。夜は休んでもらわないと。頭ではわかっているけど、心の方が納得してくれなくて、今日もまたトーク履歴を遡って当時に思いを馳せている。