住宅手当があり、スキルが身につき、転勤がない仕事を探した結果
まさか自分が、システムエンジニアになるとは思わなかった。
カタカナは苦手だし、アルファベットも数学も苦手。大学時代は大好きな日本文学を専攻して、ひたすら大学図書館で本を借りて読んで過ごしていた。サークルは茶道部に所属していて、社会人7年目の今でもお稽古を続けている。
キャリアウーマンに憧れたこともなかったから、実家が関東近郊だったら迷いなく一般事務職を選んで、実家から通勤して定時で帰る生活を送っていたと思う。
だが、あいにく実家は地方のとんでもない山奥で、就職先なんてほとんどない。生活していくためには車の運転が必須だし、18歳まで暮らしてみて、気候も厳しく娯楽もほとんどない、閉鎖的な環境にほとほと嫌気が差していた。
だから、実質東京で就職するという選択肢しかなかったのだが、私が選びたかった一般職は実家から通うこと前提の職種なため、住宅手当も出ず、お給料も低い。それでは生活できない。
そんなこんなで、住宅手当があって少しでも高給、ひとりで生活していくためにスキルが身について、全国転勤でバリバリ働くイメージも湧かないから転勤なし、と仕事を選んでいくと、システムエンジニアに行き着いた。
夫に捨てられたら生きていけない、と顔色を伺うことがない
それでも、前述したように極度の文系のため、不安も多かった(適応できずすぐに辞めてしまったら元も子もない)。そのため、金融(文系が多い)の知識が求められる金融業界のシステムエンジニアで、なおかつ、入社後の研修期間が長い会社を片っ端から受けた。
そうして行き着いたのが、ひとり暮らしの部屋を借り上げてくれて、IT研修が半年という私にとって最高条件の弊社だった。
情報処理の国家資格が難しくて、泣きながら取得したりなど、大変なこともあったが、本当にこの仕事に就いてよかったと思っている。
まず、給与が高い。今の私は結婚しているが、結婚したらなおさら自分の給与は重要だと感じた。いつまたひとりになるか、シングルマザーになるかもわからない。また、夫に捨てられたら生きていけない、と顔色を伺うことがない。
いつでも自分ひとりで生きて行けて、なんなら子どもひとり養える、と思えることは、驚くほど精神的な強さをもたらしてくれた。スキルがあるから、転職だって可能だ。どこへ行っても大丈夫と思える。
大きな決断だったけれど、結果的には良いことずくめだった
また、この仕事は立場にも扱いにも男女差がない。仕事ができる人はどんどん新しい仕事を任されるし、昇給していく。合理的に考える人が多いから、女性だから、と色眼鏡で見てくる人が少ない。
学生時代、地方銀行にインターンに行った時に驚いたのだが、総合職は男性、その他は女性、という職種の違いがあり、女性は総合職を志望してもエリア総合職に変えさせられるという。
また、数少ない総合職の女性と総合職男性との扱いには歴然とした差があり、総合職男性には社宅が提供されるのに、総合職女性にはそれがなく、自腹で部屋を借りているという。
都内の銀行に一般職で就職した友人が、「男性のほうが仕事ができる」と無邪気に発言していたのにもショックを受けた。彼女の会社では、総合職は旧帝大卒の男性ばかりだという。彼らが会社を回しているのを見ているうちに、そういう考えになったのだろうか……。
日本文学専攻からシステムエンジニアになる、というのは大きな決断だったし、なんなら不本意な選択だったが、結果的には良いことずくめだった。
自分でお金が稼げてスキルが身につくと、社会に自信を持って対峙できる。パートナーにも対等な心持ちで接することができる。男女対等に働いているから、ストレスが少ない。
今では、自分がプロジェクトを回すことに向いていることに気づき、仕事自体も楽しいと思うようになった。
これからも勉強してスキルアップして仕事に邁進し、お金を稼いで楽しく暮らしていこうと思う。