眠れない夜なんて、数えきれないほどたくさんあった。
例えば、友達との電話がなかなか終われない時。明日は仕事だから早く寝ないといけないのに……。寝不足が続くとお肌が荒れてしまうのに……。頭ではそう思っていても、なかなか通話の終了ボタンを押せないのだ。

ちょっとの話のはずが、すごい時間。友達との電話は止まらない

友達との電話って、何でこんなにいつまでもしてしまうんだろう。最初はちょっと話を聞いてほしかっただけなのに。
モヤモヤしてイライラしてどうしようもなくなった時、思い出すのは仲の良いあの子の顔。「こんなことがあってさー」と最初はLINEをしてみる。返信が来て詳しくやり取りしているうちに、どちらからともなく「ちょっと電話する?」の文字。

ひとたび声を聞いてしまえば、女子の会話はなかなか終わりが見えない。悩み相談のはずが愚痴大会、近況報告。話は脱線しまくりで、私たち最初何の話してたっけ?ってなることもしばしば。そして気付いたらすごい時間。朝まで話してたなんてこともある。
コロナ禍の今、なかなか直接顔を見て話すことが難しくなっている。だから余計に、感染のリスクが全くない電話がより盛り上がるのかもしれない。

眠れない夜。例えば、良くない考えにとらわれてしまった時。
私は自分でも思うが、心配性なところがある。ネガティブをポジティブに変換できず、一度沼にハマってしまうと、しばらくそのことが頭から離れなくなってしまう。
例えば仕事で嫌なことがあった時や、夫と喧嘩をした時。さらには「あの時の私の言葉や態度は、誰かを傷つけてはいなかっただろうか?」と、どうしようもないほど過去のことまで気に病んだりする。そうして常に周りの人の顔色を伺いながら自分に自信を無くしていく毎日は、正直しんどい。

眠れない夜を救うスマホ。画面には「眠れない夜 理由」の文字

夫や子どもたちは隣で気持ちよさそうに寝ているのに、私は一人布団に潜りながら、寝れぬまま夜明けを待っている。そんな日が何度もあった。
身体も心もしんどいし、疲れ切っているはずなのに目を瞑っても全く寝れる気配がない。家族を起こさないようそーっと静かに布団から出て、一人で紅茶を飲みながら号泣した日だってある。そんなこと、きっと誰も知らない。
一通り涙を流して我に返った私は、再び静かに布団に戻る。しかし全く寝れない。まるで自分の身体が眠ることを忘れてしまったみたいに。

こんな時、良質な睡眠、健康的な生活なんてくそくらえと思ってしまうのだが、そんな時手に取るのはスマホだ。良くないとは分かっていながらも、今の私を救ってくれるのはスマホしかない。
そんな縋るような気持ちで頼った画面に表示されるのは、「眠れない夜 理由」の文字。匿名の掲示板には、私と同じように眠れない人たちの悩みがたくさん書いてある。
それを読んで、再び涙を流す私。相当メンタルにキてるな、と思いながらなかなか読むのを止められない。

一人じゃない、そんな安心感に包まれて、目を瞑る。すると不思議とぼんやりしてきて気付くと夢の中。しかしすぐに起きなきゃいけない時間が来て、結局3時間も寝れなかった、というオチである。

昔みたいにひたすら眠れる時を、今は楽しみに待つばかり

子どもの頃は、いつでもどこでも寝れるのが自慢だった私。学生の頃も、常に眠たくて思い悩んで夜寝られないなんてことがほとんどなかった。
よく「どんな嫌なことも寝れば忘れる」なんて言うけど、私は寝ても大体覚えている。どうにかしてこの心配性を治したいが、染み付いた性格はなかなか変えることができない。結婚して子どもを産んでから、特に生きづらさを感じるようになった。
昔みたいにひたすら寝れるその時を、今は楽しみに待つばかりだ。