私は生まれ持った美人ではない。
そんな私の見た目の変化による他者からの対応の変化に、疑問を持つことが増えた。

世間一般からすれば、「美人」=人生の勝ち組、世の中は顔、といわれているらしい。実際に、SNSではキラキラ輝いてる女子グループをよく目にする。
彼女達は本当に幸せなのだろうか。

私は高校生の頃、とても太った。髪の毛はボサボサだし顔はパンパンで、元々大きい方だったと思う自慢の目は、いつしか笑うと存在を消すほどだった。
当時女の子だらけの学校にいた私は男の子と関わりもなく、恋愛どころか女の子らしさなど考えてもいなかった。そんな私だけど、友達にはとても恵まれていた。顔の整った可愛い子も体育会系のかっこいい女の子も大人しい子も、当時「女性」という重い肩書きから逃げて笑いをとっていた私の周りに集まっては、性格や見た目に囚われずに笑い転げて騒いでいた。

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そんな私は、大学生になってクラスに男の子のいる生活に変わった。
ほんの些細なきっかけだった。同じ学科の男の子に女の子扱いをされた私は、そこから人生が変わっていく。
高校生の時は、女の子扱いされるどころか重たいものは私に任せろ!というキャラだったから気づかなかったが、一応美しくない私にも「女の子だから」という理由で気を遣われるものらしい。
そして、とある女の子達には「痩せたら絶対可愛いのに〜!」「もっとオシャレしたら?」と言われた。明らかに見下した態度に嫌悪感も覚えるが、何も言い返すことが出来なかった。
当時の私は「女の子」という事実を突きつけられ、急に自分の現状に羞恥心を感じるようになる。

そこから私は運動や食事制限などでダイエットをし、SNSでメイクを研究し、服装もトレンドを取り入れるようになった。
自分で言うのもなんだが、別人レベルに変わったと思う。

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では、ここからが本題。
まずは男の子。これまですれ違っても空気のようにスルーしていた男の子に声をかけられるようになった。
「絶対彼氏いるでしょ」
「絶対モテるでしょ」
私の中身を知らない彼らは、モテる=見た目で判断という認知バイアスに囚われた考え方をしていた。
本当の私を見ようとはせず、自分の欲求だけで発言する男の子が、運悪く私の周りには多かった。
次に女の子。今まで見下していた女が突然チヤホヤされるようになるというのは気に入らないものなのだろう。私のことを「ビッチ」とありもしない噂を流されることが増えた。
そして、過去の太っている私の写真を拡散する人もいた。

痩せろ、お洒落しろ、と自己の価値観を押し付けてきた彼女達は、次は「男の気を引く為に必死」と陰で言う。
矛盾にも程がある。
遊ぼうと誘ってくる子は、「SNSで映えるために、この色のこんな服にしてね」と何故か決めつけられる。料理を頼んでも、その子達は写真を撮るのに必死でしばらく料理を食べることは出来ない。彼女達の間に友情などはなく、自己肯定感と承認欲求に塗れた薄っぺらい関係を目の当たりにした。

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さて、ここで最初の話に戻ってみよう。美人は本当に幸せなのか、という話だった。
世間一般でいう「女性らしさ」を手に入れた私は、他者からの偏見やイメージの押し付けにより「自分らしさ」が出しづらくなってしまった。
男の子から上辺の好意を寄せられては、それに嫉妬した女の子には偏見を言われるという地獄のループ。

自分を認めてくれる60の人がいたとしても、自分を批判する40の声の方が心に刺さるように、他者の価値観の押し付けに私はとても悩まされている。

本物の「美人」は、上手くかわしているのだろうか。はたまた、影で悩み苦しんでいるのだろうか……。
この固定観念が世の中における課題なのではないだろうか。