人間のやる気スイッチの稼働時間は短い。生理の周期のようにやる気スイッチのオンオフがある。

やる気スイッチがオンのときは仕事が楽しく、働けば働くほどやり甲斐が見出せていき向上心があふれる。そして家事も家政婦さんのようにこなすことが出来て、私はスーパーウーマンのように思える。
やる気スイッチも携帯の電池と同じで、だんだん減っていく。あれだけ楽しかった仕事が淡々とこなす作業化していき、家事もだんだんと面倒になり、やる気スイッチが切れた頃にはトンネルの中に入ったような生き地獄を感じるようになる。

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やる気が出ないときは疲れているとき。そう感じるようになったのはつい最近のことだった。

娘が小学生になった。私の娘は親の私が思う環境や人に慣れるまでかなり時間がかかり、繊細でこだわりが強く難しい。
娘は保育園に生後半年から通ったが、最初通った保育園は小規模園だったため2歳児クラスまでしかなく、卒園して転園という形で年少クラスから年長まで家の近くにある保育園に通った。

最初の1年はとても大変だった。担任の先生が娘と相性が悪く登園拒否を起こしてしまい保育中の怪我が多く、それを何も知らされなかったため保育園に対して不信感が募ってしまい、親子共々潰れそうになった。また同居している母からも担任の先生の印象が悪く、母と保育園の板挟みになり私は苦しかった。
そういった経験があったので、小学校入学が不安であった。

担任の先生と上手くいっているのだろうか、自分の気持ちをちゃんと伝えることが出来ているのだろうか、同じ保育園以外のお友達と仲良く出来ているのだろうか。登校班の子供たちの娘に対する対応が私の時代と違い冷たく感じたため、不安になった。娘も環境に馴染むのに精一杯だからなかなか学校での様子を話せず、私は心配になってしまった。

環境が変わって神経質になっていて習い事や仕事のスケジュールも変わり、私自身もついていくことに必死だった。
母親だから、シングルマザーだから、ちゃんとしていたい。その想いが先走り、フルタイム勤務後の遅い帰宅時間でも自炊にこだわり続けた。娘は頑張って作ったご飯を残したのでそれも悩みに繋がっていて、日に日に自分は追い詰められてしまった。

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ある日娘から、クラスに友達がおらず上級生や違うクラスの友達と遊んでいると言われ、私はいじめを疑い、夕方学校に行った。担任は帰っていたので学年主任と話した。
学年主任からの返事は教科書通りな答えだけど、言い方が優しく感じたので心が楽になった。彼女からしても私は追い詰められているように感じたのだろう。

そういうことがあり4月下旬、私は熱が出て、手の痺れが続くようになった。病院ではストレスによる過換気症候群と診断された。
ビタミン注射を受けている時、看護婦さんからやる気が出ない時に無理をしなくてもいいんだと言われ、私はやる気がでないときはそういう時と割り切るようになった。

久しぶりに買ったレトルトカレー。フルタイム勤務の日に温めて娘に食べてもらう。娘は早くご飯が食べられるので機嫌が良く、美味しいから完食する。
レトルト食品でも子供は育つ。衣替えで去年のワンピースを着たパツパツの着心地の娘を見て、私はそう思った。