「胸が大きい女の子はエロい」
大人になってから、そんな価値観を持つ異性と出会うことが多くなった。
今の時代は、スマホ一つでアダルトビデオやグラビアの世界に入れるからこそ、「胸が大きい女の子が、男性の内なる性的欲求を満たす世界」がそこに広がっているからこそ、「胸が大きい=エロい」とレッテル貼りされてしまう。
それが嫌だった。
けれど、今では胸が大きいことも、体形がグラマラスなこともすべて含めて、私は私の身体を愛している。

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私は平均的な女の子よりも少しだけ成長が早くて、小学校6年生の頃には、バストが膨らんできた。
キャミソールだけでは隠せきれなくなった胸を、ノンワイヤーの少女用ブラでカバーしていた。
真っ白の、左胸にりんごや蝶々のワンポイントだけがある、シンプルなブラ。

身体の変化を面白がったクラスの男子に、特に体育の時間にからかわれることが本当に嫌だった。
準備体操の時間や、授業が始まる前などに、男子たちはわざと私の両腕をつかんで前に引っ張って、私の体育着の脇のスキマから見える、白色のブラジャーを面白がっていた。
私は、他の女の子よりも発育が早かったから。

「胸があるといじめられる、からかわれる」
ブラをつけるようになった頃に私が、自分の胸に対して抱いた印象は最悪だった。
胸があることが嫌だった私は、小学校の女性のカウンセラーに愚痴のように相談していた。

「胸がなくなってほしい」
そう言う私に対して、カウンセラーの先生は、
「世の中の女の人には、おっぱいが大きいことを武器に、お仕事をしている人もいるよね。胸が大きいことは恥じることじゃないし、胸が大きいからこそ似合う洋服もあるよ。男の子はいつまでも子供っぽいって思えばいい」
すごく勇気づけられた。

中学生、高校生と思春期を迎えた私は、やはり胸が目立つような服装は避けていたし、胸が大きく見えないようなブラを身に着けていた。
教室の隅っこで隠れてアダルトビデオを見るような同級生の男子は、「胸が大きい女性」に興奮していたし、「胸が大きい子ってエロい」と言うようになった。私は「胸が大きい」という身体的特徴によって、私の性癖、性的指向も一方的に決められたような気がして、嫌だった。だから、隠した。

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20歳になって、世の中の男女間の不平等さに違和感を感じるようになった頃、「なぜ私が自分の身体を隠さなきゃいけないのか」と思った。
「ただ胸が大きいだけで、なぜ私が自分の身体に恥ずかしさを感じないといけないのか」

女性の胸は性的な目線で見られやすい。
胸が小さい人は、「女性らしくない」と言われ、ボーイッシュキャラにされることもある。
胸が大きい人は、「下品」「エロい」と言われる。

私は胸が大きいから、ボタン付きのブラウスを着るときには、キャミソールが必須だ。胸が大きいから、ボタン部分が浮いてしまって、キャミソールなしでは隙間からブラが見えてしまう。それをわざとやっているとは思われたくない。

私は自分の身体が、一般的なかわいい小柄な身体じゃなくても、自信をもって、自分が着たい下着を買おうと思った。
「この下着かわいい」と思うと、自分のサイズがなかったりして、残念に思うことも多いけれど。

大きなバスト向けのブラは、その大きな胸を支えられるようなデザインになっているから、下着メーカーのCMに出てくるような、パステルカラーを中心としたフェミニンなデザインではないこともある。
それでも、好きな下着を身につけて鏡の前に立つと、自信がもてた。

気分が上がるから、派手な色の下着を身に着ける。
堂々としていられる気がするから、身体のラインが見える服も着る。
異性のためにしていることではなくて、私が私の身体と上手に付き合いながら、毎日を楽しく生きるためにしていることだ。

胸が大きく見えるけれど、それが私だから。
胸が大きくても、胸が小さくても、やっぱり女の子でいることって、最高。
私は私の身体を愛しているから、私が着たい下着を選んで、私がうきうきするような服を着て、今日も出かける。