高身長、細くて長い手足。自慢のスタイルは脊髄腫瘍に奪われた
私はスタイルが良い。
昔からそういわれていた。身長は皆よりちょっと高い方。細くて長い手足。
私自身、自慢に思っていたから、スキニージーンズや短めのスカートなんかも好んで着た。
友達からも羨ましがられることが多かった。
「スタイルが良いからなんでも似合うね」
家族も知り合いも、皆そう言ってくれた。
こういうのは何度言われても嬉しいものだ。
そんな私が二十歳の時、よくつまずいたり、靴が履きづらくなりだした。
筋力がおちてるのかもと思ってジムに行くと、今度は上手く走れないことに気付いた。足が思うように動かない。
外国の大学に行っていた私は、次の休みに帰国し、病院に行って診察をうけた。
CTスキャンやMRIをうけた結果、見つかったのは、脊髄内腫瘍だった。
脊髄内腫瘍とは名前の通り、脊髄の中に腫瘍ができる病気だ。腫瘍に神経が圧迫されて、私の脚は動きにくくなっていたのだ。比較的珍しい病気、とのことだった。
10時間の手術の後、私は車椅子となった。
何をするにも時間がかかる。
トイレでズボンを下ろすのにさえ普通の倍かかるから、ウエストがゴムのゆるい物しかはけない。
ひらひらのスカートなんてもっての他。
それにせっかくの長い足も高身長も、いつも座って移動しているんじゃなんの意味もない。これからずっとこのままだと思うと悔しくて涙が出た。
車椅子生活のなか、他人の不幸が前を向くきっかけになった
退院した私は、一度はリハビリで歩いたりはしたものの、病気が悪化して完全に車椅子生活となった。友達とも疎遠になり、引きこもって外にも出ていかなくなったし、化学療法による副作用で、服用中は夜も眠れず、一晩中吐くこともあった。
もともとポジティブな私でも、かなり辛かった。
そんななか、ニュースなんかで同じような状況にある人たちを見ると、少し勇気付けられた。中にはもっと重い病状の人もいた。
本当に辛い目にあった人にはわかると思うが、他人の不幸を喜んでしまう自分がいるのだ。
喜ぶというより、安堵という方があってるかもしれないが。
あの人に比べると自分はましだ、こうならなくて自分はラッキーだった、と思うことがあるのだ。
そう思うことが、前向きになるきっかけになった。くよくよしていても仕方ない。
私にはもっと出来ることがある。
私に出来ることをやっていく。苦しんだ分を取り返す姿は美しい
私は今、少しずつ以前の自信を取り戻している。
着やすさ重視の、ウエストがゴムになっているジーンズや、肌が弱くても使えて、石鹸で落とせる化粧品。私も使える物は探せば色々見つかった。
車椅子も、色や形を自分でカスタムして作った。この間は、限定付きで、運転免許も更新した。
一時はやめてしまっていた趣味の歌と作曲も始め、SNSでシェアすると、いろんな人からメッセージがくるようになった。同じ車椅子の人たちや、そうでない人からも応援してもらった。
始めは、病気のことを公開するのをためらった。決して良いことではないし、知られるのが怖かったから。
けど、これが私だ。これからこの身体と共に生きていくには、自分を受け入れないといけない。
病気だということに甘えるなとか、利用するなって言葉をたまにきくけれど、私は全然構わないと思う。
自分の身体は自分が一番よく知っている。
人を傷つけるような発言をしたりするのは勿論許されないが、病気でたくさん苦しんだぶん、違う形で少しでも取り返そうとする姿は美しい。
もしこの文を誰かが読んで、「私ももう少し頑張れるかも」と一人でも思ってもらえたなら、私にまたひとつ、出来ることが増えたということだ。