20年来の幼馴染に告白された。
衝撃、というより混乱しかなかった。

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彼と出会ったのは、良く覚えてはいないが、4歳の頃だったように思う。まだ幼すぎて、はじめての習い事に戸惑い泣いていたら、同じように泣いている男の子がいたのだ。
それが幼馴染だった。
そこから幼稚園と中学校が同じ、小学校と高校は別だったが近所だったし、親同士の付き合いもあってずっと友だちだった。
所謂、男女の友情ってやつだった。
でも、思春期に差し掛かるとなんとなく私の方は幼馴染を異性として意識したりもした。
16、7歳の私にとっては、恋人をつくることは周囲の友だちもみんなしていたことだったし、仲良くしてる異性とは付き合うのが普通なんだろうと漠然とそう考えていた。2人きりで遊ぶことが多かったのもあったと思う。
でも結局高校時代、私と幼馴染は恋人同士になることはなかった。
幼馴染が私の親友と付き合いだしたからだ。
しかも私にその事実を隠していた。

すごい怒った。親友とは喧嘩した。
けれど、それだけだった。嫉妬とか悔しさとかショックはなくて、隠されていたことだけが嫌だった。
幼馴染に抱いてたのは、恋じゃなかったってようやくわかった。

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あれから10年程経ち、知らないうちに幼馴染と親友は別れていた。当時の親友とはもう何年も音信不通だ。
幼馴染とは未だに2人きりで遊んでいた。
旅行にも行った。家にも泊った。何もないけど。
誕生日プレゼントを買うときに、彼女?と言われるのを「幼馴染です」ってきっぱり言ったりもした。

でも去年、他の男性とあまりにも精神的に疲れてしまうデートがあって、次会ったときに酔った調子で「高校生のとき、ちゃんと好きになっとけばよかった」って幼馴染に私は言ってしまったんだ。
それは、交際を隠されていたことに対する少しの不満と嫌味のようなものだった。恋ではなかった淡い青春のもやつきを、今ごろぶつけてしまっただけだった。
そこでちょっとだけ本音の気持ちを10年越しに伝えられて、やっと決着がついたなと私の中ではそこで終わった話だったのに。

けれど幼馴染は告白してきた。
BARで、逃げ場がないボックス席で、結婚を前提にって。
君に恋愛感情のような激しい気持ちはないけれど、穏やかで居心地がいいからいたいって。
付き合えないならもう会わないって。
好きなわけじゃないけど大事だからって。

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意味がわからなくて、酒の味がわからなくなった。
なんでこんなこと、クリスマスに言われないといけないのと泣きそうになった。
告白されたのに悲しくて仕方がなかった。
そんなこと言ってほしくて、好きになっておきたかったなんて言っていない。
幼馴染に恋してなかった。幼馴染も私に恋はしてなかった。
でも私はちゃんと好きだった。好きだったんだよ。
恋じゃなくても幼馴染としての君を、幼馴染というカテゴリで、大事だったんだよ。高校生のときも、今も、それは恋じゃなかったけれど、異性の中では1番に好きだったんだ。
でもわかってしまったんだ。

いま私は、君の中で結婚するのにちょうどいい女なんだろうなって。

人を好きになることは苦手だ。
実をいうと、誰かを好きという感情は未だによくわからない。
多分私は、恋することはできない人間なのだろう。でも結婚や恋人に憧れている矛盾した人間。
だから一方的にでも誰かに愛されてみたいな、好きになって欲しいなって、なんとなく、思っている。それが叶わなくても別にいいんだけど、そうじゃないならいらない。

私を好きにならなかった幼馴染へ。
だからごめんね。
都合良い幼馴染の女になんて、なってあげらんないや。