少なからず、人並みに恋愛をしてきた。
もちろん、全ての人と円満に別れたわけではない。振られたこともあれば、その逆で振ったこともある。
そんな中でも、ピカイチでありえないなと思った振られ方をご紹介しよう。

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彼との出会いは、高校の部活動だった。テニス部に入っていた私は、大会で見かけた他校の二つ上の先輩に一目惚れをしたのだ。
何かしらの関係を持ちたいと思った私は、すぐに彼と同じ学校のテニス部の人をInstagramで探した。運が良いことに、彼はけっこう積極的にSNSをするタイプであり、アカウントはすぐに見つけることができた。とりあえず彼のアカウントをフォローしてみると、彼からフォローが返って来た。それだけでなく、ダイレクトメッセージまで送ってきてくれた。

そこから私たちはたくさん、メッセージのやり取りをした。時には電話もしたりしたし、大会で会った時には少し話したりもした。
私は彼のことが好きだったが、なかなか言い出せずに、気づけば彼は部活を引退してしまった。それでも変わらず、メッセージのやり取りは続いていたため、一度遊ぼうと彼は誘ってくれた。
そうして迎えた初めてのデートの日。少し曇った、秋の香りがする午後に彼から好きだと言われ、付き合うこととなった。
クリスマスには一緒にイルミネーションを見に行ったし、彼の誕生日には遊園地に行った。そうして日は過ぎていき、三月。彼は高校を卒業した。
彼が大学生になってからも私たちの関係は何ら変わりなく、気づけばずいぶん長い間、付き合っていた。

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月日は流れ、私も高校を卒業し、彼と同じ大学に入学した。学部こそ違ったものの、同じキャンパス内にいれば自然に会う機会も増えた。学校帰りに海に行ったり、ドライブをしたり、大学生らしい幸せな日々を送っていた。
……ここまでが素朴ではあるが、幸せな関係だった。
大学に入って約一ヶ月が経ち、私ははじめて髪を染めた。しかも、黒髪から金髪へと大幅なイメージチェンジをした。
彼には髪を染めたことなど何も言わずに、サプライズ的な意味も込めて髪を染めた次の日にデートに行った。ところが。
待ち合わせ場所で小さく手を振る私を見た彼の第一声は「何それ」だった。しかも、今まで聞いたことのないような、軽蔑や侮辱のニュアンスが含まれた冷たい声色だった。
どうやら、私のサプライズのイメージチェンジ計画は、破綻したらしいと一瞬で気づいた私は、「やっぱ似合わないよね。失敗しちゃった」と必死の笑顔でその場を取り繕った。
彼はどうやら黒髪の私が好きだったらしい。いや、もしくは私の黒髪が好きだったのかもしれない。

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正直、デートの記憶はちっともない。そして、帰り際に彼は私を振った。
道路の縁石を蹴りながら話す彼を、横目で見ながら私は少しだけ、泣いた。悲しくないのに泣いた。女の子を泣かせたことをいつか後悔したらいいのにな、と思っていた。ほんとは少し悲しかった。
家に着く頃にはもう全然悲しくなかった。そんなくだらない理由で振られた事実や、自分の男の子を見る目のなさなど、色々なことを考えると笑えてきた。

と、まあ。これが私の人生において一番のありえない振られ方だ。
男ウケを考えずに髪を染めた私が悪いのか、黒髪しか受け付けない彼が悪いのか、もしくは誰も悪くなどないのか、それとも両方悪いのか。それに関しては色々な見方があると思うが、今となっては、ただただくだらないなあ、としか思えないのである。

綺麗な思い出を一瞬で消し去ったあなたへ。
せいぜい、一生涯黒髪でいてくれる女の子と、幸せになれたらいいね。