私の恋の始まりは、予感と共にやってくる。
出会った時はそうでもなくても、話したり、相手の人となりを知るうちに、この人素敵だという直感が、この人なんだか気になるになって、そのうちその人と話すと頬が自然と緩み、その人に会えると嬉しい気持ちが胸いっぱいに広がる。そして、ある時、私はこの人に恋をしていると思う。
そう気づくともう止められなくて、何よりも彼を優先して、彼のどんな姿も受け入れられて、彼の言葉が私の全てを支配する。好きと言われれば、天にも昇る心地だし、可愛い綺麗と言われれば、もっと言われたいと欲張りになる。
彼から向けられる極上の笑顔が、私を幸せにする。その一方で、彼から不平不満を言われれば、まるで全てを否定された心地になる。
浮き沈みが激しいけれども、とても楽しい時期だと思う。初めの3〜6か月は私はそんな感じになる。本当に恋は盲目とはよく言うけれど、本当にその通りだと思う。
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その波が過ぎると、今度は相手の嫌なところが目につく。
受け入れられていたことをおかしいと気づき始めて、相手にとって理想の彼女になりきれなくなる。どうして、こんな人を私は好きになっていたの?と思いはじめる。
彼が私に理想の彼女を見るように、私も彼に理想を見ていることに気づく。そして少しずつ新鮮味が薄れて、初めは受け入れられていたことが受け入れられなくなっていく。こんなところは嫌、でもそれも含めて彼なのだから受け入れなければと考えて、彼の嫌なところを彼に伝えることができず、一方的にため込んで辛くなる。
そして彼を私の心から締め出そうとする。彼からのラインを見ると嬉しかったのが、心が激しく負の感情に揺さぶられ、拒絶しだす。
声を聞きたくない、会いたくない、ラインを読みたくない……、1人にしてほしい。そして、別れてほしいと言うのだ、いつも決まって私から。
一過性の強い感情はすぐに消え去る。馴染んで知っていく恋ではないから、馴染まずに終わる。理想ばかり求めるから、理想と違うと拒絶する。そうして私の恋は終わる。
そして、そこに取り残された彼はひどく取り乱す。彼は必ずしも冷めてはいないから。私の気持ちがあまりにも早過ぎるから。
彼の懇願に不快感すら表す私を彼らはひどい女だと言う。それを聞き、私も自分がひどい女なのだと思う。あんなに好きになって夢中になった相手にもう好きじゃないから別れてと表情を変えずにいえるのだから。そして、自分に関わるとろくなことがないと、相手をあんなにも苦しめてしまうならもう恋はしないと、思ってしまう。
そんな恋をすればするほどに私の心は擦り減らされてしまい、いつしか恋は悲しいものになった。
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あれから数年が経って、心を擦り減らす恋はしなくなった。ある時から理想を追わなくなった。彼という人を見るようにした。
過去の私は何度も相手を傷つけてきた。一方的に別れを告げることで。彼らには本当に申し訳なかったと思う。そして、深く感謝している。彼らのおかげで私は一過性ではない恋ができるようになったから。
彼らがなじったひどい女という言葉は今でも耳に残っていて、時々、私はあの頃と同じことをしていないだろうかと自問する。きっとあの頃の彼らは私を否定することで、自分の傷ついた心を少しでも浅くしようとしていたのだと思う。自分は悪くないと、私が悪いのだと。正確には私の考え方が悪かったのだけれど……。
次に恋を見つけたら、相手をまっすぐ素直に見つめて、相手を受け入れて自分の心を開きたいと思う、私はもうひどい女ではないのだから。恋は楽しくて幸せになれるものだから。