ふられた理由。
それさえ聞いていれば、私の中でこんなにモヤモヤした別れにはならなかっただろう。

2021年7月7日。
私たちは、この日に入籍する約束をしていた。
でも、その半年前に、彼から一方的に別れを告げられた。
もう無理、別れる。それだけだった。
せめて、彼の中で最終の審判が下される前に、彼の中で決めてしまう前に、ふたりで何日かかっても話し合いたかった。お互いが納得いくまで、とことん向き合いたかった。
でもそれは、叶わなかった。

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私以外に女性の影は無い。積もり積もった思いも彼の中にはあったんだろうし、私にも悪いところはあるんだと思う。
ただ、婚約破棄にまでなるふられた明確な理由は分からない。

付き合う前から友達関係だった私たちは、お付き合いと同時に結婚の約束を交わした。
世間で言う、交際0日婚というものだろう。
結婚すると覚悟を決めて彼がいる土地へ移り住み、新しい仕事を始め、私にとっては人生で一大事の転機だった。
もちろん、親や友達にも結婚することを伝えていた。

彼と私は、どちらも一人暮らしをしていて、お互いに生活に必要な物が揃っている。
私が彼の家へ移ることになった為、私の荷物を処分することになった。
それも受け止めた。
もしもまた、一人暮らしをする事になったらその荷物が必要になるかもしれない、という可能性もその時に、荷物と一緒に捨てたはずだった。
それは私だけじゃなく彼もまた同じだろう、と私は思っていたのだけれど。

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それが結局、わたしと荷物はあっさり追い出された。
27歳を迎える私の誕生日の1週間前に。

婚約指輪はまだ貰っていなかった。
私に残った物は、「結婚しましょう」と交わした文章のLINEと、約束が果たされなかった、両親へ挨拶する日取りのやり取りのLINE。
それだけでも十分に一方的な婚約破棄として、訴えることもできただろうけど、そこまでする気は無い。
それは、彼の事を嫌いになりきれていないからだと思う。

人生、散々だ。全部こんなはずじゃなかった。人に恨まれるような生き方はしていないはず。
それなのにどうして、私がこんな目に遭わないといけないのか、と泣くことしか出来ない日々だった。

友達に話したら、「良い経験をした」と言うけれど、私からしたらこんな経験、避けて通れるものなら全力で避けたいものだ。
私にとって必要な経験だとは、どう考えても思えないものだった。
でも、この人と結婚しなくて良かったんだろう、というのはなんとなく思う。

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それからしばらく経ち、自分の気持ちもようやく立て直したところに彼から連絡が入った。
「元気か」と様子を伺うものや、こちらの恋愛事情を伺ってくるものだ。
そういうのがたまに彼から来る。来たら連絡に応じる程度で、私は素っ気なく返していた。
ふった側はあっけらかんとしていて、何もなかったかのように、「元カノの1人」くらいのように連絡をしてくるのだ。
どういうつもりなのか、男性心理はさっぱり分からない。
ふられた側の私は、こちらからは一切連絡を入れていなかった。連絡をする用件も言い残した言葉も、何も無いから。
それは自分の中で守っていた。

あの出来事から、地元に帰って仕事も始めた。新しい彼氏もできた。
“昔の男”から探りの連絡が入るのもめんどくさくなって、最近やっと電話番号も変えた。これで、一切の繋がりを終えた。

結局、私が婚約破棄までされた、ふられた明確な理由は何だったのだろう。
考えたところで分からないけど、私は七夕に入籍するのだけはやめよう、というのは心に決めている。