私がありがとうを伝えたいのは、NPO法人の代表をされている女性(Mさん)です。
知り合ったきっかけは、ボランティア活動への参加でした。

当時、私は病気で仕事を休んでいました。
自宅の近所に児童の緊急支援に関わる団体があり、活動の一環で、こども食堂が開催される広告がありました。
ボランティア募集をしており、私は、こどもが好きだったため、活動に参加しました。
MさんはNPO法人の理事長をされていました。
こどもたちとは楽しい時間を過ごすことができました。

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活動の終了後、Mさんは、「困ったことがあったら、いつでも相談してね」と連絡先を教えてくださいました。勇気を出して連絡すると、Mさんは私のために、時間を取ってくださいました。

Mさんと話すとき、緊張しました。
私の不安そうな様子を見て、Mさんは、時々質問をはさみながら、ゆっくりと会話を進めてくださいました。
仕事のこと、生活にかかるお金のことなど、心配事を話しました。
聞き終えるとMさんは、「今まで大変だったね」と声をかけてくださいました。

そのときの、Mさんの真剣な表情や、深い声のトーンから、私を思いやってくれる温かさが伝わってきました。
「勇気を出して、連絡してみてよかった」
と心の底から思いました。

その後、Mさんは、新しい仕事を紹介してくださいました。
緊張しないように、上司に相談しやすいように、支援をしてくださいました。
私は、新しい職場で頑張るぞ、と意気込んでいました。
しかし、上手くいきませんでした。
教えられたことを覚えるまでに時間がかかる、些細な変化に追いつかず、涙がこぼれてしまう。
職場に行くことを考えただけで緊張している自分がいました。

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「どうして、こんなにできないのだろう」
落ち込む日々が続きました。
今思い返すと、
「周りの人たちに合わせないと。輪を乱さないようにしないと」
と、力んでいたように感じます。

体調不良のため、病院を受診しました。
私を心配したMさんは、同行受診してくださいました。
私は初めて、広汎性発達障害と診断を受けました。
医師から診断名を告げられたとき、頭の中が真っ白になりました。
自分が発達障害だと、思い当たる節はある。

ただ、「どうして私なの?」というやりきれなさで胸が苦しかったです。
「私の気持ちを分かってもらえるはずがない」と、周りの人たちに心を閉ざしました。

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その後、私は福祉サービスを使いながら暮らし始めました。
苛立つ気持ちを、支援してくださる方にぶつけてしまったときもありました。
そんな自暴自棄だった私に、Mさんは、「障害は恥ずかしいことではないのだよ」と声を掛けてくださいました。

最初は、Mさんの優しい言葉を受け入れる余裕がなかったです。
それでも、Mさんは何度も時間をかけて話を聞いてくださいました。
トラブルが起きた際は、
「それをしたときにあすかさんはどう思ったの?」
「あすかさんの態度で、相手は傷ついたと思うよ」
と伝えてくれました。
Mさんの言葉を聞くうちに、
「私のことを、こんなに真剣に考えてくれる人がいるのだ」
と感じるようになりました。
「この方は私の可能性を信じてくれているのだ」
それを理解し、心で感じられるようになったとき、ありがとう、という気持ちで胸がいっぱいになりました。

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分かってもらえるはずがないと、壁を作っていたのは自分だった。
できないことも、自分の言葉で伝えたら、周りの人たちは理解してくれる。
Mさんと出会えたことで、自分の気持ちを、言葉にして相手に伝えられるようになりたいと思いました。

今は新しい目標があります。
仕事をして、人の役に立つことです。
障害があったからこそ、人の心の温かさに触れることができました。
辛い経験をした私だからこそ、困っている人たちの気持ちを想像できます。
今まで沢山の人たちからもらったエネルギーを、今度は私が困っている人たちに返したいです。
これからも、自分にできることを丁寧に積み重ねていきたいです。