私に刻まれた夏、私に刻む夏。
ついこの間まで灰色のような世界を見てた私の今は、なんだかカラフルに見える。
心が燃えてるのは何故だろう。
それはきっと季節が変わっているから。
そう、この暑い気温が、強い日差しが、「夏」が、私を燃やしてるんだ。
いろんな感情がある中で、"懐かしい"の気持ちが一番好き。
今年も夏がやってきた。あの懐かしい夏が。

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さて、私には思い出の夏がたくさんある。
ひとつは高校時代部活に全てを注いだ夏。閉め切った体育館の中、走って声出して、笑って泣いて。負けて悔しくて勝って嬉しくて。あの時は必死に、だけど全力で「バドミントン」に熱中していた。

練習はきついし地味だし先生怒ってばっかりだし、すごい辛いことが多かったけど、乗り越えた先にある試合はすごい刺激的で、心揺さぶられるものだった。全力だったから感情も全て露骨で、あの時の私は自分に素直に生きてたと今はすごく思う。
流れる汗で日焼け止めが落ちても、前髪がくちゃくちゃになっても、気にしなかったあの頃の自分がちょっとだけ羨ましい。

二つ目の思い出は、大学1年生の夏。前期は実家でオンラインで授業を受け、夏休みに入り上京した。新しい世界といったらなんと新鮮で、楽しくて、心躍るものなんだろうと思った。たとえ一人だったとしても、どこに行くのも楽しくて、一丁前に「一人暮らしは冒険してる気分だなぁ」なんて言っていた。

東京に少しだけ慣れてしまった今は、沢山の人混みや高い建物に前ほどワクワクすることはなくなってしまったように感じる。上京したての自分が田舎者に感じ、幼くも感じて思い出しては少し恥ずかしいけれど、きっと数年後引っ越して新天地に移った将来の自分はこの時の自分のようにワクワクするし、意味もなくフラフラ散歩したりするような気がする。そんな予感。

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そして2022年の夏、今この時。どんな夏になっていくのか。
暑くて外に出ない1人の時間に色々将来のことを考えてみたり、かと思えば何も考えずに思い立って電車に乗って飛び出してみたり。私自身、自分のことよく分からないけど。この飛び乗った電車の先は自分を探す旅にしよう。

今はなにかモチベーションが足りない。できれば予定を入れなくないなぁ、家でゆっくりしたいと思っても、いざゆっくりしたらしたでなにもしなかった罪悪感に苛まれる。
かと言って、外に出て何かをする気力もなく。なにがそうさせてるのか分からないけど、ひとつ言えるのはそんな私はしょうもない。

何かしなくてはと思いつつ、何もしない日々が続き、嫌気がさした私は「ああもう!!」と半ば投げやりに午前5時半に決心した。「今日はいっそのこと東京を出てやろう!」と。朝早く起きたのではなく、寝ずに行くことにした。

腰が重いのか、行動力があるのか。変だと思いつつ、まあいっか精神でいざ電車へ。
そして今、電車の中、文章を書いている。
隣ではご夫婦が穏やかにお話をしている。窓の外を眺めると青い空や季節外れの紫陽花が見えて、蝉の声も聞こえてくる。
普段は寝ていて知らなかったこの時間のこの世界。あぁ、いつのまにかあの懐かしの夏が来ていたんだなと改めて実感した。

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「旅路とは、五感に頼る、興趣カナ」
これは私が作った5・7・5の俳句だ。五感には嗅覚も含まれていて、その場所での"匂い"というものがこれまた記憶に大事な役割を果たしている。
今回、この衝動的行動は旅なんて大層なものではないけれど、五感をフル活用してその場の空気を楽しんでいこうとしよう。

「私に刻まれた夏」それぞれ1年1年が違う思い出を刻んで違う感情に出会えたように。
「私に刻む夏」今の自分も新しい何かを見つけられたらいいと思う。これから先も自分にとって新しい夏を迎えていきたい。