アダルトビデオ。略称、AV。
これは日本独自の名称である。
私が初めてセクシー女優さんの映像というものをきちんと見たのは、高校生の時だった。
性行為に興味が湧く中で、世の中の男という生き物がどのようなものに興奮し、どんな夢を抱き、世の中に生きている人の性嗜好にどれだけの種類があるのか、ということを純粋に知りたかった。

世の中には、自分が生きている内に理解も出来ないであろう複雑で繊細な性的嗜好や、常識では想像もできないほどの興奮の種類が存在する。
そして、自分には分からないものに興奮を覚えるのは未来の彼氏かもしれないと思うと、知らない世界への好奇心は止まる事がなかった。

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だが、この手の話には必要以上に嫌悪感を抱く女友達が大半だった。
両親のそのような行為の果てに生まれた肉の塊が私たちだよ、という私の声は外には出さずに中にしまった。
セクシー女優という仕事に対してもネガティブな印象を持つ事しかできない友達に関しては、職業に優劣をつけるタイプの子なのだ、と悲しくもなった。彼女は近い将来、いや、現段階でも既に私に値札に近いようなものを付けており、人の価値を肩書きや学歴で見ているのだろう、と思った。

そんな辛い日も、私は夜な夜なAVを見続けた。
私はAVを見ている内に自分の性的趣向を知ることも出来た。私はこのようなシチュエーションの、このような展開が好みなのか、と分かると病名を知った患者のようにどこか安堵する気持ちになった。
学校の中で男子が話す会話にセクシー女優さんの名前が聞こえた時には耳をそば立てて、家に帰って必死で調べた。クラスのあの男子はこういう女に興奮を覚えるんだ、と無駄な知識を入れては妄想だけが一人歩きをした。

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日本の性教育では、正しい性行為の手順というものを教えている学校は殆どないだろう。
AVは教科書ではなく、誰かが板書したノートレベルのファンタジーであるが、そのことを男子側が認識していなければ傷つくのは女の子だ。
正しい技術と知識がなければ性行為で愛を伝える事も、愛を感じる事もできないだろう。
そんな日本の性教育で大人になった日本人の中に、正しい性の知識を身につけている人はどれだけいるのだろうか。
海外では、男女共に生理のメカニズムやタンポンの使用方法を学んだり、野菜を用いて実際にコンドームを付けたり、レイプの防犯手段としてフェラチオを教える学校もあるらしい。
かたや日本では保護者が性教育にクレームを入れ、タブー視する有様だ。
どんなに子供を溺愛していても性経験まで介入し、全ての面倒を見れる親はいないであろうというのに。
きちんとした性教育を学ばせないという行為は、自分の子供を信用していないという行為にも思えてならない。知識がない事で傷つくのは自身の子供かもしれないのに……。

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私は、彼氏が出来るともっと熱心にAVを見るようになった。それは自分の快感に加え、セックスをした際に彼氏にも気分が良くなって欲しい、という奉仕の思いからくる勝手な努力でもあった。
女性用の物、企画物、SM物、百合物、BL物、素人物、フェチ物……etc。
ありとあらゆる物を見た。中には笑ってしまうようなものもあったが、そこを含め楽しんでいた。
色々な人の性癖に刺さるように幅広いジャンルを扱う日本のAV業界は、今や世界中の人から重宝される日本を代表する文化の1つだ。

私は、高校生から現在に至るまで彼氏がいる時期もいない時期も定期的にAVを見てきた。
他の多くの男性がそうであるように自分だけの楽しみ方で、自分だけの見方で、自由に、好きなように楽しんでいる。
誰にルールを教えてもらう訳でも無く、本能のままに気分を良くしている。
この時間だけは、誰にも邪魔をされたくない。
私は1人でこっそり、誰にも言わない時間を過ごす。