「ありがとう」なんて、改めて面と向かって伝えたら、あなたは一体どんな顔をするのかな。難しい話をずっと避けてきた私たちにとって、「ありがとう」と「好き」というこの2つの言葉たちは、遠い遠い国の言葉のように思えるほどだった。
付き合うことなく、でも離れることもできず、ただなんとなく、居心地の良さに甘えて過ごしてきた時間。最初は愛おしさに比例して虚しさも感じていたけれど、最近は「あぁ、こんな関係もアリだな」なんて思えるようになった。
少しは大人になれたかな?なんて。
そんなことを思っている時点で、まだまだ子どもなんだろうけど。
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ありがとう。あなたに出会わなければ、この世界に溢れる素敵なモノたちを知ることができなかったよ。
「芸術」と呼ばれるそのモノたちを鑑賞し、手に触れ、自身の生きる糧にすることができた。今まで知らなかった世界の裏側にも、目を向けられたような気がしたよ。
ありがとう。あなたに出会わなければ、こんなに綺麗になろうとは思えなかったよ。
見た目も中身も部屋もなにもかも、今の状態に満足して、もっと先を目指そうとしなかった私。そんな私を奮い立たせてくれたのは、間違いなくあなたの存在だよ。
もっと先の高みへ。心に余裕と見た目に美しさを。ずっと若々しく輝くあなたが教えてくれた、大切なこと。
ありがとう。あなたに出会わなければ、こうやって感謝の気持ちを書き出そうとは思わなかったよ。
どんなに一緒にいても、連絡をとっていても、「ありがとう」の言葉はなかなか出てこなかった。というより、言えなかった。なんとなく繋がっている私たちがお互いに感謝をする時は、この恋が「これから始まる時」か「もう終わる時」のどちらかだと思い込んでいたから。だから言えなかったのだ。きっとそう。
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多分、これから先も言えそうにないな。だってまだまだ、始まりそうにも終わりそうにもないから。「言ったところで何も変わらないよ」なんて思われるかもしれないけど、これで良い。まだ口に出すつもりはない。いつかお互いがお互いの心からいなくなる日が来たとしても、この感謝の気持ちは消えることはない。その時はきっと虚しさを感じてはいないだろう。むしろ、「ありがとう」の気持ちの方が強いかもしれない。
今の私が在るのは、あなたとの出会いがあったからで、だけどその中で「私」という存在が消えることはなかった。「好き」とはまた違うこの感情の名前を私は知らないけど、かけがえのない存在であることに変わりはないよ。時々「それってどうなのよ?」なんてツッコミを入れてしまう時もあるけど、その辺はご愛嬌ということで許してね。
私はあなたを幸せにできないし、あなたも私を幸せにはできないかもしれない。でも、私にはあなたが必要だから。あなたじゃなきゃダメだから。切なくも愛おしいこの日々に付箋をつける。いつか思い出してページをめくるその日まで。