「102」は私たちが出会った、高校1年のクラス名だった。
江ノ島のハワイアンパンケーキのお店で、入店待ちの整理券を発券したら、番号がまさかの「102」。
「えっこんな偶然ある?」と、笑いあったあなたとは、永遠に良き友達でいたい。
お互い心のどこかで、今以上の関係性を望んでいるのかもしれない。
それでも、今の心地よい関係性を壊したくないから、恋人にはならない私たち。
大学時代の空白の4年間を経て、久しぶりに会っても、良き友達のままだった。

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以前書いたエッセイ(「高校時代を共に過ごしたけれど、付き合わなかった彼のことを忘れない」)の主人公になった、高校時代の私の一番の男友達であった彼は、今は東京にはいない。
「お盆休み、東京戻るから、会えたりする?」
そんなLINEが届いた。
「高校生の頃みたいに、水族館でも行こうよ。まだ行ってないところで。新江ノ島水族館は?」

私たちは高校生の頃、「おでかけ計画」という名目のもと、高校生らしく、よく遊びに行った。
絶叫系ジェットコースターに乗れなかった私は、彼のおかげで、ジェットコースターに乗れるようになり、カメラを向けてもなかなか笑ってくれなかった彼は、笑顔の写真が増えた。
「やだ、絶対に乗らない」と言う私を引きずって、東京ドームにある、約80mから急降下するジェットコースターに3回も乗せたのは彼だったし、犬や猫のかわいいフィルターがかかるカメラアプリで、面白半分、写真をよく撮ったのは私だった。
私たちが出会った高校1年から、もう8年もの年月が経っていて、あの頃は、お互いが仕事の話をする時が来るなんて想像もしていなかった。
高校卒業後、違う大学に通っていた間は、ほとんど会っていなかったけれど、大学卒業後、お互い就職して、私は東京に残り、彼は広島へ。
広島で働き始めてから、東京に戻ってくる時には「会える?」と誘ってくれる。

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今年のGWに4年ぶりに再会して、社会人として会うのは今回の江ノ島が2回目。
水族館で、カップルと家族連れに囲まれながら、イルカショーを見た後は、次の日に筋肉痛になることが目に見えていたけれど、高校生のように、江ノ島シーキャンドルまで階段で登った。
江ノ島神社でおみくじを引いて、どっちが凶を出すのか、賭けをして、私は数年ぶりに大吉を引いた。きっと高校生の頃なら、コンビニのハーゲンダッツを賭けていたけれど、彼はカフェでコーヒーをごちそうしてくれた。

海を見ながら、隣に座る彼に、
「高校生の頃の記憶ばかり残っているんだけど、なんで大学生の頃は会わなかったんだろうね~」
と、ぼそっと問いかけてみた。彼は、「同じ東京にいて、いつでも会おうと思えば会えたじゃん。LINEはずっと続いていたじゃん。だから、会わなくても同じ時を共有している気がしていたんだよね。それが、東京に帰省しないと会えないってなると、会えるチャンス自体が本当に少ないから、会いたくなるんだよね」と。
彼がさらっと答えたことに少し驚きつつも、「なるほど」と思った。
「会えないことが当たり前」だと、会えることが大切に思えて、会いたくなる。

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「次は年末年始に東京戻るよ、その時は飲みにいこうよ」と。
「成人して大人になったら、一緒にお酒を飲もうよ!どっちが早く酔いつぶれるか気になるね」と話していたあの頃から8年がたった今、「居酒屋じゃなくて、少しくらい高いお酒でもいいから、ちゃんと美味しいご飯を食べながら、飲もうよ」と言う彼に、「いつの間にそんな大人なことを言えるようになったんだろう」と心の中で思った。
思わず、「なんだか紳士になったね」と言った私を、彼は「かおりんは変わらないよね。確かに髪色は明るくなったり、メイクもピアスもしてるけど。昔の雰囲気のまま」とさらっと言う。

「あのさ、面白い話聞いてよ。会社の同僚と、ネットの結婚力診断テスト受けたら、何点だったと思う?」と。
「20点」
「まさかの100点満点中9点。俺、独身貴族まっしぐら」と笑う彼。
「9点ってぶっちぎり赤点じゃん」と2人で爆笑する。
ネットの診断テストなんて科学的根拠もないけれど、同じ診断テストを受けてみたら、私は72点という結果が。
「あ~やっぱり。かおりんは、いい人だから。幸せになってよ」という彼に、「まあ別に結婚にこだわっているわけじゃないんだけどね」と曖昧に返す私。

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なぜか疎遠になっていた大学の4年間。
空白の4年間があるのに、私たちには濃い高校3年間の記憶が残っていて、まるでつい昨日高校を卒業したかのように、記憶がよみがえってくる。
クラスメイトや先生からの寄せ書きメッセージがある、私の卒業アルバムの最後のページには、彼は緑のペンでこんなメッセージを残していた。
「3年間ありがとう。こうなると思ってなかった」
なんて意味深なメッセージ。「こうなると思ってなかった」は、「友達としてこんなに仲良くなれると思ってなかった」の意味なのか、「付き合わずに友達として居続けるとは思わなかった」の意味なのか。
本当は彼に聞いてみたいのだけれど、きっと今聞いても、もう覚えていないだろう。

8年来の男女の友情。都合が合ったとしても、彼とは、年に数回しか会えない。
毎回会うたびに「久しぶり」の気分がして、高校生の頃の「人間として一緒にいて好き」なのか、「異性に対する恋愛感情の好き」なのか分からない当時の気持ちを思い出す。
心のどこかが疼く、この純粋で美しい男女の友情は、いつまで続くのだろう。