「あなたはきっとなにか障害があるとおもうよ」
当時の仕事先の上司のその一言が、今でも私の胸に深く残っている。
その人からしたら何気ない言葉だったのだと思う。

◎          ◎

演者になりたいという夢を追うために地元を離れ上京した私は、成功できると信じて疑わなかった。
バイトをしながらレッスンに通う日々。
上京したての頃は感じなかった人間関係への違和感が、年齢を重ねるごとに徐々に膨れあがっていった。
鮮明に覚えているのは、当時所属していた事務所の演技のワークショップに参加していたとき。

2人ペアになる授業のときに、自分ひとりだけがペアが組めなかったこと。
激しくその場から消えたくなった。
いままで小学校~高校でも少なくとも友達はいたし、バイトでも仲のいい人はいてそんな思いをしたことは一度だってなかったのに。
ワークショップの人達はけして悪くない。かなり歩み寄ってくれていたとおもう。
けど、私はなぜかそれを受け入れようとせず周りから浮いた結果、孤立してしまったのだ。

◎          ◎

それからいろんな人と関わるのが途端にこわくなった。
そして昔のことを思い返してみて、地元で孤立しなかったのは自分の周りに大人が多かったこと、友達も心が広く大人だったことに私はきづいた。

おもえば、小学生のころからアニメや舞台なんかが好きで、飛びぬけてオタクだった私は、周りがみえなくなり、自分の好きなことばかりを話し過ぎてしまっていたり、両親が共働きなおかつ一人っ子だったので遊び相手や話し相手もおらず、友達が家に来ているにもかかわらず一人でアニメを見ていたり途中で寝たり、どっちかというと想像や一人遊びが得意だった。

それでも友達は沢山いていっしょに遊んでくれたし、誘ってくれていた。
正直自分は幼少期の記憶がそれほど残っていないのだが、よく遊んでいた友達に一度だけ、
「あなたは私に話しをふってくれないよね、いつも私が会話ふってる」
と言われたのを突然思い出した。

ああ、そう思えば昔から私って会話のキャッチボールやコミュニケーションが不得意だったんだ。

◎          ◎

自覚してからというもの、一応は自分の言動や行動に人一倍気をつけるようにはしている。
それでも、しゃべるのは苦手意識があるし、「ちょっと周りの人とあわないから」と2日でバイトをクビになったこともあったし、「貴方はむかしから落ち着きないの?」「病気?」と言われることもいまだにある。

年齢をいくら重ねようとも、重ねるからこそなのか、なかなか世間様に溶け込むのは難しい。
合う合わないはあるし、心ない言葉に傷つくこともたまにはあるけれど、これまでついてきてくれている人、同じように自分って病気なのかな?と悩む人、友達もわたしにはいる。
けして上手くは生きられないけど、そんな自分も愛してちゃんと受け入れてあげたい。
最近はすこしだけそう思えるようになった。