恋人とは付き合って約7年。
この年数と20代後半という年齢を言うだけで「そろそろ結婚……」と、誰でもイメージしていることが伝わってくる。
先日、私はその彼に別れを告げた。

出会いは大学でのサークル。優しい性格でありながら何事にも熱い志を持っている彼が、とても魅力的に映った。
勉強やアルバイト、就職活動に追われながらも彼と充実した学生生活を過ごした。

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試練を感じたのは、社会人生活とともに始まった遠距離恋愛。
「環境の変化で人は変わる」という言葉通り、お互いに新しい世界が広がって、きっと私たちの関係も自然に終わるんだろうと、どこかで諦めている自分がいた。
けれども、実際に変わったのは物理的な距離だけだった。
休みの日が合うと、彼はすぐに新幹線に乗って会いに来てくれた。
毎日連絡をとるようになり、どんなことでも常に共有するようになった。

その後、私は体調不良を理由に退職を決め、このタイミングで彼との同棲生活が始まった。
数週間に一度だけ会っていた距離感から、ほぼ毎日顔を会わせるという生活習慣に戸惑いながらも、喧嘩と話し合いを重ねて、楽しく同棲生活を続けてきた。
当然、30代、40代、いくつになってもライフイベントを一緒に迎え、歳を重ねていくと信じていた。

しかし、ずっと変わらなかった気持ちに変化が出てきていた。
コロナ禍だ。
多くの場面で戸惑いや不安、悲しみを感じると同時に、自分の将来について考えるようになった。
漠然とした悩みを誰にも相談せずに抱え、辿り着いた答えは、彼との関係を終了すること。
つまり、「別れる」ということだった。
裏切られるような決定的な出来事があったわけでもない、別に好きな人ができたわけでもない、彼を嫌いになったわけでもない。けれど、別々の人生を生きていこうと。

なんともはっきりしない理由を正直に話した。
この決断を、最終的に彼は受け入れてくれた。

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新社会人ぶりの一人暮らしが再び始まり、時間が解決してくれたことは2つある。
ひとつは、「思い出の断捨離」。
彼と一緒に行ったことがあるテーマパークやデートスポットは、その場所の近くに行くだけで、一瞬で記憶が蘇る。
当時のことを思い出しては落ち込んでいたときもあったが、今では、そんなこともあったなと懐かしさを感じるだけで長々と思い出に浸ることがなくなった。
形として手元に残っているものに対しても、ある日突然向き合うことが可能になった。
実は、約7年の間でもらったプレゼント、旅行で買ったお揃いのお土産、毎日使用していた腕時計や財布など、視界には入らないように今の部屋のクローゼットに隠していた。
モヤモヤしている気持ちに区切りをつけたくなって、ひとつひとつ仕分けを始めた。
リサイクルショップに買取をお願いしたり処分をしたりして、やっとクローゼットにも心にも余白が出来た。

もうひとつは、「無駄だったことはない」と思えるようになったこと。
いつかは結婚、という「ゴール」を少なからず思い描いていたことは事実だ。
別れた直後は「私の7年間返して」と思ってしまった自分もいる。
だが、彼と出会って私の人生に好影響を与えたことはたくさんあることに気づいた。

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はっきり言えるのは「料理」だ。
料理が得意だった彼は、包丁の持ち方さえ分からなかった私に一から料理を教えてくれた。
同棲生活をしていたときは、週末にいろいろな料理を一緒に作って食べることが当たり前だった。
一人暮らしになってからは、完全に私好みのレパートリーになったが、週末の作り置きを続けている。
彼に出会わなければ、料理の楽しさはもちろん、食べることの楽しさすら知らないままだったかもしれない。

時間は常に進むのに、気持ちはいろんな感情が行ったり来たりして無限ループにはまっていってしまう。
止まらないからこそ、ゆっくりでも段階的に折り合いがついていって、自分自身を、そして彼自身のことを俯瞰することができてきたように思う。
20代の私の人生は、彼と一番時間を共有し、苦楽を共にしてきたと言っても過言ではない。その思い出を感謝と学びに変えて、30代を迎えたい。