本を読むことがずっと好きだ。
きっかけは小学生のころに読んだ児童小説だった。内容はファンタジーで、非日常的な物語に夢中になったわたしはすぐに本の虫になった。
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読書の世界に没頭したわたしは、学校の図書室と図書館に入り浸り、手当たり次第に本を借りて読んでいた。
小中学生のころは表紙を見てかわいい、かっこいいと思った本ばかり読んでいた。あとは題名を見て面白そうだと思った本を手に取っていた。少し成長してからは好きな作家の本を選り好みして読んでいた。
中学に進学して少し経ったころ、地域の図書館で何気なく手にした本があった。題名がとても素敵だと思った。表紙には3人の少女が描かれていて内容はミステリーだった。本格ミステリーというよりは自殺した同級生の死について同級生たちが思いを馳せるようなシスターフッド的な耽美なものだったと思う。
特に内容に共感したり雷が落ちるような感銘は受けなかったが、しばらくのあいだ心のすみに存在が残っていた。忘れられないくらいに題名が素敵だった。それは何気ない日々の生活の中で道端ですれ違った人に妙に惹かれて、印象だけが残る感覚によく似ていた。
その時は特にその本について調べたりすることはなくそのまま返却した。ふとした時に題名を思い出すこともあったけれど、気ままに他の本を読んだ。
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本に埋もれているうちに中学高校を卒業して大学生になった。大学に入学してからは近現代文学を専攻するようになり、大正から昭和初期にかけての作品が好きになった。耽美な作風が特に好きだった。
忙しくも充実した日々を過ごしていたわたしは大学の図書館で題名に惹かれて一冊の本を借りた。産業革命のイギリスを舞台にした作品でひとつ屋根の下に暮らす少年たちが殺人事件を追っていた。
ミステリーではあるがトリックよりも少年たちの関係性に重きを置かれているように感じた。読んでいるうちになんとなく既視感を覚えた。はじめて読んだ小説なのに題名も以前どこかで見たような気がした。
気になったわたしは作者の経歴やこれまでの作品を調べてみた。あっと思わず声を上げた。中学生のころに題名に惹かれて読んだあの本の名前があった。
同じように題名に惹かれて読みはじめた本を見て、偶然の出会いではなかったのだと思った。
中学生のころよりも大人になったわたしにとって、その作品はとても魅力的で面白かった。それから同じ作者の作品をいくつも購入して読んだ。どの作品にも必ず巻末に参考文献が載せられていて、歴史と知識に裏付けられて書かれているものだと知った。
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大学も卒業し、社会人になった今でもわたしは読書が好きだ。
きっとこのまま生涯の趣味になるだろう。この先の人生を思えば新しい出会いも再会もきっとまたあるかもしれない。あってほしいと思う。
今年の春には大学の図書館で再会を果たした作品のシリーズ最新作が出たらしい。
彼女が亡くなるまで、わたしは彼女の作品を求めて読もうと思っている。