私は泣きたくても泣けなかったことが増えてきた。泣けばすっきりするのに、涙が全然出てこないのだ。
それを強く感じたのは就活の時だった。就活で一度も泣いたことがないと言えば嘘になるが、心がよどんでいて、すっきりさせたくて、涙がでてこないか期待したことが何度かあるが泣けなかった。
孤独で、全くうまくいかず、心が死にそうだった。泣いてしまえば一時的にも楽になるはずなのにいったいなぜと思った。
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子供の頃はよく泣いた。ケンカで負けて泣いたし、転んで泣いた。それに感動して泣きもした。自然にだーだー涙が流れてくるのだ。泣くといつも心がすっきりした。しかし、大人になるにつれ泣かなくなってきた。
今その理由を考えてみると、一つは泣いても解決しないと知ってしまったからではないかと思う。子供の頃は泣けば何かしら不思議と解決していた。けれど大人になって泣いても、泣くだけでは何も解決しない。どうせ泣いても無駄だと脳が諦めてしまったのだろう。そうなってしまう自分はなんて悲しいのだろうと思った。
もう一つの理由は、自分が悲しみに疲れてしまったのではないかと思う。悲しみを何度も感じて麻痺してしまったのではないかと思う。
こう言っているからと言って、私がかなり不幸かというとそうでもない。普通の人より悲しいことが多かったくらいだ。不幸か不幸じゃないかなんて量れるものでもないかもしれないが。ともかく悲しいことが多すぎてそうなったのではなく、普通の人よりやや悲しいことが多い人生を歩んでいるうちに悲しみの感度が鈍ってきたのではないかと思う。
これは普通に生きてきた人でも生きているうちに悲しみが積もってくるのだから、なることもあるだろう。
以上が私が思いついた、泣きたい時に自分が泣かなくなった理由だ。
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泣きたくても泣かないことのデメリットといえば、ストレスを簡単に解消できないことだ。もやもやして毒が溜まった感じがする。あの薄暗い世界に急に光が差して希望があるんじゃないかという感覚がもう味わえないのだ。私は泣いてすっきりしたい。そしてもう子供ではないと寂しく思ってしまうことだ。
一方で泣かなくなったことのメリットといえば、目を泣きはらさなくてもすむことと、大人なのだと思えることだ。そして余計な心配を他人にかけなくてすむことだ。
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デメリットとメリットを両方考慮すると、泣かなくなったことは悪いともいいとも言えない。一番ベストなのは涙をコントロールできるようになることだ。泣くとまずい時には泣かず、泣いても問題ない時泣きたかったら泣いてすっきりさせることだ。
どうしたらそのベストなコンディションにもっていけるか分からない。それは不可能なのかもしれない。私の状況とは反対に年を取ると涙もろくなると聞いたこともある。人は良くも悪くも変わっていくと誰かが言っていた。もしかしたら今よりもっといい涙との付き合い方ができるかもしれない。私はそれを楽しみに生きていこうと思う。