彼女の瞳が好きだった。ふとした瞬間に蘇る彼女との思い出

まだあまり人には話さず、ずっと心にしまっている記憶がある。
それは、もうこの世にはいない、私の親友との記憶だ。

彼女とは、私が3歳の頃から一緒だった。
私の一番の親友だ。
昼間は家の庭で遊んだり、追いかけっこをしたり、よく公園にも遊びに行った。
楽しいことも、転んだ時も、怒られる時もいつも一緒だった。

私が呼びかけると、彼女はいつも私の方をじっと見て、「どうしたの?」と目で訴えかけていた。
その瞳はとても印象的であった。
彼女の常に潤いがあり澄んだ瞳をみると、なぜか心が落ち着いた。
彼女はとても素直で元気で、人見知りの私とは正反対の性格だ。
だからこそ、強く惹かれたのかもしれない。
私は彼女のことが大好きだった。

彼女が家からいなくなった。閑静な田舎町での賑やかな一日

ある日、彼女が家からいなくなったと街で騒ぎになったことがあった。
私の家族も近所の人も総動員で街中を探し回った。当時私の住んでいた家は、人口2万人ちょっとと小さい街にあり、さらにその中でも小学校と中学校が一つずつあるだけのこじんまりとした住宅街に位置していた。

彼女はその小学校で見つかった。
私はまだ小学校に上がったばかりで、彼女とは3つ歳が離れていた。
彼女は私に会うために小学校に来てしまったのだ。
まだ6歳だった私は、嬉しさと恥ずかしさの入り混じった気持ちで彼女をそっと抱きしめた。
彼女はまた、何か訴える目をしていた。
その時、なんと声をかけるのが正解だったのだろう。
私は、彼女の瞳に映る自分がなんだかとても小さく感じた。

自慢の友達だった彼女のおかげで、充実した日々を過ごせた

彼女との思い出はそれだけではない。
私の小学校の友達の間でも彼女は有名で、皆、彼女のことが好きだった。

「え、彼女珍しい子なの?」
「うん。唯一無二なの」
「へー!すごい!!」

両親の出身がそれぞれ異なっており、彼女はいわゆるハーフであった。
皆、彼女のことを特別だと言った。
私はまるで自分のことのように、彼女を誇らしく思った。

自分から人に話しかけることが苦手な私であったが、彼女のおかげで遊ぶ友達には困らなかった。
放課後はいつも私と彼女と学校の友達とみんなで遊んだ。
足の速い彼女は鬼ごっこで誰にも捕まることはなかった。
つられて私も足が速くなったように思う。
私は運動会の短距離でも長距離でもいつも上位だった。
子供時代、彼女のおかげで充実した毎日を過ごせたと思う。

生きている限り皆、限りある存在ということを思い知った

私が中学校に上がってからも、彼女との関係は変わらなかった。
そんな彼女が、私の目の前からいなくなったのは突然のことだった。
私が駆けつけた頃には、彼女は横たわり、もう二度とあの小さな瞳を私に向けることはなかった。

原因は不明だ。
しかし、生きている限り、誰しも命には限りがある。
当時、私は14歳、彼女はまだ11歳であった。
人間でいうと還暦程度だ。

彼女の名前は『リリィ』と言い、我が家の飼い犬であった。犬種は雑種だ。
『リリィ』は英語でユリを意味する。
彼女にぴったりの名前だった。

「リリィ」
もう彼女の名前を呼ぶことができなくなると思うと、まるで胸の奥にとてつもなく重たい錘を抱えているような気持ちになった。
私は彼女と出会えたおかげでよく笑うようになり、友達ができ、人と繋がることができた。
そして、14歳にして、命の大切さを知ることができた。

本当に彼女には感謝している。
このエッセイは、そんな親愛なるリリィへ捧げたい。
これが私と彼女との記憶、私の隠し事だ。