「ごめん、その日予定があるんだ」
「じゃあ、〇〇日はどうですか?」
「その日も予定あるんだ……」
「じゃあ……」
今なら、24歳のわたしなら、遠回しに断られていることが分かる。これは大人の"優しくて、ずるい"断り方だと。
18歳のわたしは、まさに諸突猛進という言葉の通り、まっすぐだった。まっすぐすぎてしまった。

友人を思う彼女は、あの日のわたしときっと同じ

久しぶりに会った友人が「一女に告白されたんだ」と少し複雑な顔で打ち明けてきた。
別に好きな子が居るって気づいてるのに、それでもいいって言うんだって。
一緒にお酒が飲める後輩と思っていたのに、そんなつもりじゃなかった、なんて顔をして。

ああ。
あの時のわたしと同じだ。
あの頃を思い出すかのように、鼻の奥がツンと痛んだ。

6年間女子校に通って、大学生になった。
途端に、世界が変わった。
それなりに異性との関わりはあったはずなのに、初めてのことばかりだった。
わたしが今まで生きていた世界がおかしかった、と思ってしまうくらいに。

少女漫画のようなハッピーエンドが訪れると信じていた

好きになった人がいた。
確認なく抱きしめられたことなんてなかったし、頭だって撫でられることもなかった。
さっきまで高校生だったわたしには、刺激が強すぎた。
だから、きっと、わたしのことが好きなんだろう。
多分そんな気持ちだった。

その人からすれば、お酒で酔って、なんとなく近くに居て、声をかけたら寄ってきた一女に優しくしてみただけ。きっとそうなのだろう。

そうだったとしても。
わたしは好きになってしまった。
休日のデートに誘って濁されることも、
誕生日や約束を忘れられていても、
酔った時だけ甘い言葉を囁いてくることも、
全部気づいていたけど、それでも振り向いてくれると思ってしまっていた。

少女漫画ではヒロインは大抵幸せになる。
途中でどんなに傷つけられても、結局追いかけた相手は振り向いて、ハッピーエンドで終わる。
いつだって、誰だって、真っ直ぐ想えば伝わる。
そんな恋愛しか知らなかった。
だから待ち続けた。
いつか、漫画みたいに振り向いてくれる時がくるのだろう、と。

今、あの日のわたしのような彼女に会えるなら

でも、今。
今、あの日のわたしに会えるのなら、抱きしめて、こう伝えたい。

たくさん、頑張ったね。
本当に、頑張った。
こんなに人を好きになれるなんて、すごいね。
でも、今わたしは幸せ?
たくさん、しんどいなって、泣いたでしょ?
その人と一緒にいる自分やその人のことを考えている自分のことは好き?
焦ったり、その場の空気に流されて、悲しいことやモヤモヤを無視しないで。
わたしに何が足りないからとか、なにかが悪いからとか、そんなんじゃないの。
わたしはわたしで魅力的で、その魅力に気づけない人たちはもったいないだけだから。
追いかけるのも悪くはない。
けれど、わたしときちんと向き合ってくれる人と向き合ってみてほしい。
大丈夫。
それだけ人を好きになれたんだから、きっと大丈夫。

きっと、抱きしめられたかった。
辛い時、そんな恋愛辞めなよって怒ってくれる人もいるけれど、18歳のわたしは、大丈夫だよって、ただ抱きしめてほしかった。

あなたは愛される価値のある人間なんだよって、雑に扱われている方がおかしいんだよって、そう言って抱きしめてほしかった。

だから、今、あの日のわたしに会えるなら、あの日のわたしのような彼女に会えるなら、そっと抱きしめてあげたい。
泣きたい日々を送っているあの日のわたしに、今の強くなったわたしから、もう泣かなくて大丈夫。大丈夫だからと伝えながら。