とても気分が良い。私は先週、生まれて初めて、デパコスを買ったのだ。
デパートのコスメコーナーに入るのは、私にとってはすごく勇気のいる事だった。でも、とても可愛いデザインのリップを手に入れられて、勇気を出して良かったと思う。
すごく嬉しくて、何度も眺めた。私はずっと、デパコスに憧れていたから。

高校生の頃に、クラスメイトの一軍女子が「彼氏から貰った〜、ありがとう!大事にします」という大量の絵文字付きの文章と共にSNSに載せていた画像。それはブランド物の口紅。「可愛い!」そう思ったのと同時に、「私もいつかプレゼントでちょっと高めの化粧品が欲しいな。プレゼントされるような素敵な人になりたい」と強く思ったのを覚えている。

「いつかデパコスをプレゼントされるような素敵な人間になる」
それがずっと目標だった。しかし、高校を卒業して三年半が経過しようとしているのに、その気配が一向にないのだ。ここのブランドのこの口紅!と限定している癖に誰にも言っていないせいかもしれないけれど。

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とても優しい恋人はいるけれど、最近付き合い始めたばかりだし、お誕生日でも何でもないのに「あのブランドの口紅が欲しい!」なんて絶対に言えない。しかも、口紅のカラーバリエーションが豊富できっとどれを選んでいいか分からないだろう。憧れの口紅を前に、ずっと憧れていた私でさえ「どれが良いのだろう……」と狼狽えてしまったのだから。

「もう自分で自分にプレゼントするか」
そう決めてデパコスを買いに出かけた。あの一軍女子がプレゼントで貰っていた口紅のブランドだ。デパートのコスメコーナーに入るのでさえ初めてだった。いつもは素通りするコーナーに立ち寄っていて、物凄く緊張した。真夏日で冷房がガンガン効いているはずの店内で、少し暑く感じたくらいだ。

「何かお探しですか?」
と話しかけてくださった店員の方がとても優しく丁寧で、余計に緊張してしまった。何色かおすすめの口紅を手に付けて、色味を見せてくれた。沢山の色を見せてくれて、どの色も素敵で欲しい色が分からなくなってしまったくらいだ。元々、色は決めていなかったけれど。

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最終的に私が選んだのは、リップだった。色のない、透明なリップ。なぜなら「やっぱり口紅はプレゼントで貰いたい」という憧れが強過ぎたからだ。リップのデザインは口紅と同じで可愛くて大満足している。
今度、恋人に「誕生日プレゼントに口紅が欲しい」と素直に言ってみようかなと思う。憧れだなんて誰にも言ったことないけれど、また勇気を出そうと思う。
一軍女子は高校生でもうデパコスを手に入れているのに、私は成人してからか……と少しの悲しさはあるけれど、いつか人と比べないように前向きに生きる自分になりたい。マスク社会だけれど、見えない所も自分の為のメイクをして頑張ろうと思う。