友達が、彼氏に浮気されていた。
彼は、友達に「結婚しよう」と言い、彼女と住むための物件を見に行きながら、他の女性と同棲していた。
友達はとても可愛くて、同棲していた女はお世辞にも可愛いとは言い難かった。
友達は彼氏にかなり貢がれていて、同棲していた女は彼に貢いでいた。
そんな三角関係は、双方に二股がバレた彼が同棲していた女を捨て、友達を選んで終わった。

2人が二股に気付いた後、同棲していた女は、友達にマウント(になっていないが)を取るようなことを言っていた。
仕事を辞めてまで貢いでいた男を奪われたのだから、悔しかっただろうし、それは彼女の捨て台詞だったんだと思う。
わたしの友達は、そんな彼女をいつまでも罵倒し続ける。
その様子が、昔のわたしと重なってしょうがない。

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あの頃、わたしは既婚者と遊んでいた。
厳密には、彼は既婚であることを隠していたから、わたしが遊ばれていた。
真相を知ってから彼と離れるまでの短い間、わたしは彼の奥さんに対する罵倒を、友達に浴びせた。
彼の奥さんは、かなり筋肉質な彼が持ち上げられないほどでっぷりと太っていて、顔は腫れているみたいにパンパンだったし、禿げていた。
甘いものが禁忌とされる病気で、運動も推奨されているのに、動きたくないからと他人をパシってお菓子を買いに行かせ、夜中に貪っていた。
そういった行動が、病気を治すために尽力していた彼の心変わりに繋がっていることにも気づかないバカだった。
わたしより学歴が低く、資格もなく、若くもない。
彼と親子ほど年が離れていたわたしは、「若さだけでも十分にアドバンテージは自分にある。その他わたしが彼女に劣る点はひとつもない」そう思っていた。

その話をすると、友達はいつも「そうかなぁ?」と言った。
わたしの口が過ぎると、よく言われていたけれど、当時は友達に何を言われても、そうは思えなかったし、すべて事実だと思っていた。

そんな友達は、彼の二股から時が経過してもなお、彼と同棲していた女にマウントを取り、罵倒し続ける。
その姿が、わたしにはとても醜く見えた。
そして、とても悲しいことに、「いつぞやのわたしにそっくりだ」といつも思う。

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「そこまで罵倒する理由がよくわからない」「あなたが言うほど、奥さんはブスじゃないと思う」
わたしが友達に言われ続けた言葉が、頭に浮かぶ。
なぜなら、そっくりそのまま同じことを、今、わたしは友達に思う。

悪いのは二股をかける方で、どちらも相手の女性は悪くない。
わたしの場合は既婚者だったから、悪いのは彼と(真相を知ってから離れるまでの)わたし。
そして友達の場合は、悪いのは二股をかけた彼で、友達も同棲していた女も悪くない。
仮に、相手の女性が自分より劣っていたとしても、罵倒されるいわれはないわけだ。

同棲していた女を罵倒する友達は、あの頃のわたしだ。
最近になってやっと理解できた。
これは、友達と、二股していた友達の彼氏と、彼と同棲していた女と、わたしと遊んでいた男と、彼の奥さんの5人が揃って、はじめて気づくことができた。
人生の中の大切な学びだと思うから、今はみんなに感謝してる。

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そしてそれは、他ならぬ彼女が教えてくれたことなのに、同じことを彼女がしているなんて、少し悲しい気持ちになってしまう。
だけど、いくら人に言われてもわからないこともある。
わたしだって、彼女が教えてくれていた頃は、「全く理解できない。自分が正しい」と思っていた。
誰かに指摘されるだけではわからないこともある。
それを、身をもって知っているから、わたしは何も言わない。
わたしは、彼女のおかげで目が覚めた。
いつか彼女も気づきますように。